前腕骨傷に伴う関節可動域制限と握力の関係について

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説明

【はじめに】<BR>  前腕の骨傷後に“痛みはないが力が入らない、不便はないが重いものだけもてない”との訴えを聞くことが多く、それらの症例において尺側指の把握力が橈側指に比べ弱いような印象を受ける場合がある。今回、リーチ動作から引き寄せ動作で重要な役割を担う肘関節・前腕の関節可動域に着目し、その可動範囲とADL、握力との関連性を考察していきたい。 <BR> 【対象】 <BR>  対象は前腕骨傷により当院に来院された患者35名35手(男性18手、女性17手)で、平均年齢30.4±17.4歳、平均経過観察期間は19.6±21.3ヶ月であった。また対象は、骨癒合が完全に得られたものであること、手指の拘縮がないこと、末梢神経疾患を伴わないことを条件とした。 <BR> 【方法】 <BR>  日整会関節可動域測定に準じ、肘関節・前腕の可動域を測定し、同じく日整会肘関節機能評価(ADL簡便法-12点満点)を用い、ADL項目を調査した。握力測定に関しては、デジタル握力計「(株)酒井医療社製」を用い、測定肢位に差が生じないよう肘関節90°屈曲位・前腕中間位にて測定し、健側比(%)を算出した。その後関節毎に可動域低下群(以下「低下群」)、可動域良好群(以下「良好群」)として大別し、各可動域項目での平均握力値及びADL値を対応のあるT検定にて両群を比較・検討した。 <BR> 【結果】 <BR>  肘関節屈曲・伸展においては、「良好群」の握力比がそれぞれ86.5%、88.9%と高く、より可動範囲の広いほうで力が入るという結果であった。前腕においては回内時「低下群」に高い値(89.5%)がみられ、回外時は「良好群」に有意に高い値(96.6%-P<0.005)がみられ、より回外方向へ可動範囲を持つほうが力を発揮できるという結果であった。また、ADL状況において数値的には「良好群」に高い値がみられたが、大きな差は認められなかった。 <BR> 【考察】 <BR>  リーチ動作においての前腕の動きは、回内位で目標物に近づき、把握しようとする。その後把握した状態、すなわち回内位の状態から少なくとも回外を伴いながら物体を引き寄せる。前腕屈筋群はその解剖学的位置から、前腕を回外することで効率よく機能し、力を発揮する。島津らは、把握動作時の前腕屈筋・伸筋の出力の割合において、前腕屈筋群の出力の割合が伸筋群より高いことを述べている。今回の結果からも、前腕回外において有意に握力比が高かったことは、よりスムーズな回外方向への前腕回旋を行うことで、前腕屈筋群の筋出力の発揮が促されるといえる。今後ADL・仕事・スポーツにおいて、どのような動作に関連してくるのか明らかにし、効率の良い動作の習得・指導方法の確立を行うことで、より早期での復帰に役立てばと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680600980096
  • NII論文ID
    130006984491
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2006.0.1.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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