手関節外傷患者の握力低下の原因と手関節特徴

Description

【はじめに】<BR> 手関節外傷後握力低下を呈する症例は多く存在し、伸筋群の弱化が原因であるという報告が多い。我々は、外来筋群のバランス及び手根骨アライメント変化の影響があるのではないかと考えた。そこで、手関節可動域とレントゲン所見から握力に及ぼす影響を検討したのでここに報告する。<BR>【対象】<BR> 2006年9月から2007年3月までに当院にて加療を行った橈骨遠位端骨折14例、キーンベック病1例、男性6名、女性9名を対象とした。受傷側は右10手、左5手の計30手である。平均年齢は49±21歳、平均観察期間190±90日であった。なお、全症例利き手は右手であった。<BR>【方法】<BR> 左右において握力と手関節の掌背屈可動域を測定した。握力測定にはデジタル握力計(酒井医療)を用いた。測定肢位は立位、肘伸展位、手関節中間位とし、Grip位置は「被測定者が握りやすい方法」に設定した。手関節掌背屈可動域測定では自動他動で手指伸展位と手指屈曲位でそれぞれ測定した。レントゲン所見はradialtilt、radialinclination、ulnervariance、scapholunateangle角(以下SL角)、radiolunateangle角(以下RL角)を受傷側のみ計測した。握力及び掌背屈可動域は健側比を算出し、それぞれ、手関節可動域健側比と握力健側比、握力健側比と受傷側レントゲン所見との相関関係をスピアマンの順位相関係数を用い危険率5%未満を有意水準とした。<BR>【結果】<BR> 握力健側比と手指伸展位での他動背屈健側比に正の相関が見られ(rs=0.57、p<0.05)、握力健側比と手指伸展位での他動掌屈健側比に強い正の相関が認められた(rs=0.68、p<0.01)。 レントゲン所見では握力健側比とSL角に強い正の相関が認められた(rs=0.74、p<0.01)。また、握力健側比とRL角にも正の相関関係が認められた(rs=0.55、p<0.05)。<BR>【考察】<BR> 掌背屈制限及び手根骨アライメントの逸脱は筋長、モーメントアームの変化を招く事が推測される。手関節外傷後の把握形態は、伸筋群の弱化から把握時に手関節が掌屈する症例が多く存在する。その原因として掌屈制限による手根伸筋群の柔軟性の低下が原因である事が示唆された。また、手根伸筋群の柔軟性の低下は、手関節外傷後、手指伸展時の掌屈角が減少している事からも推測出来る。しかし、今回の結果より、静止長の減少から伸展トルクは低下するが、SL角・RL角の増大(DISI様変形)が代償的に背屈位固定を行い、屈筋群の最大張力を発揮している症例が存在していることが考えられた。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680601033600
  • NII Article ID
    130006984564
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2007.0.107.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top