肘関節内骨折に対する早期運動療法の治療成績
書誌事項
- タイトル別名
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- ~重錘を利用した持続伸張法~
説明
【はじめに】<BR> 肘関節内骨折はどの部位においても治療に難渋する骨折である。また、手術においては解剖学的整復と強固な内固定を行い、術後早期に運動療法を開始することが重要である。今回、我々は当院で治療した肘関節内骨折の術後成績と問題点について検討したので報告する。<BR>【対象および手術方法】<BR> 症例は2005年以降に手術を施行した肘関節内骨折8症例である。性別は男性5例、女性3例。手術時年齢は15~75歳(平均50.0±21.1歳)。骨折は上腕骨通顆骨折4例、橈骨頭・頚部骨折3例、尺骨肘頭骨折1例で全例関節内粉砕骨折である。全例、観血的整復による骨接合を施行。ほとんどが顆部固定のscrewにK-wireおよびtension band wiring法を加えた方法で必要に応じてAcutrak screwや吸収ピンを追加した。術後調査期間は2~22ヶ月(平均9±6.7ヶ月)で、術後経過での問題点を検討し、術後成績は自動関節可動域(以下AROM)と日整会肘機能評価法-外傷-(以下JOA score)で評価した。<BR>【術後セラピィ】<BR> 術後外固定は肘屈曲60°、前腕中間位にてシーネ固定した。術後当日より浮腫の除去を目的とした挙上・冷却・圧迫を病棟看護師とともに徹底し、皮膚の柔軟性を保つ為に可能な範囲で軽擦法を施行した。術後3~5日(平均3.5±0.76日)より十分なリラクセーションを獲得した上で、愛護的な他動運動と自動介助運動をセラピストのコントロール下で行った。術後2週から前腕の自重を利用したROM拡大と漸増的に重錘を利用したROM訓練を行った。また、治療終了後には重錘を利用した持続伸張肢位により局所冷却を15~20分行った。炎症の消退とともに物理療法を追加し、仮骨形成期には疼痛自制内での徒手的な伸張運動を追加した。原則として、セラピィは少量・頻回に行い、炎症の助長や異所性骨化の発生に注意した。<BR>【結果】<BR> 肘AROMの平均獲得角度は屈曲136.3°±4.4°伸展-6.3°±4.4°。JOA scoreでは平均94.6±2.88点と比較的良好な結果であった。しかし、治療経過において2例で肘部管症候群が生じた。1例はK-wireのback out、1例は瘢痕組織による絞扼により尺骨神経症状を呈した。その後、抜釘とともに尺骨神経剥離術を施行し予後良好。全例において骨癒合しており、異所性骨化は見られなかった。<BR>【考察】<BR> 肘関節内での骨折後は、高度な関節拘縮を来たすことが多く、日常生活において著しく障害されることとなる。そのため、解剖学的整復による強固な内固定と可及的早期からの運動療法が重要であることは周知のことである。しかし、関節面の高度粉砕例や軟部組織の損傷を合併している症例においては、二次的な合併症を予防するため、術者からの術中所見を十分に理解した上で、きめ細かなセラピィを行う必要があると考えられた。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2007 (0), 129-129, 2007
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680601083520
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- NII論文ID
- 130006984609
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可