転倒を繰り返すパーキンソン病患者が、視覚刺激により転倒予防への改善を示した一例
抄録
【はじめに】<BR> パーキンソン病患者の歩行障害により、転倒を繰り返す症例に対し、ポジショニング・視覚刺激介入を実施した。その結果、転倒予防への改善を認めた為、若干の考察を加え報告する。本報告に関し趣旨を説明し、本人・家族に同意を得た。<BR>【症例紹介】<BR> 年齢・性別:70代女性。身長:140cm。体重:32.5kg。診断名:パーキンソン病・右肩腱板断裂・右肩関節脱臼。視力・聴力:問題なし。MMSE:22点。ROM:(右肩関節)屈曲80°・外転50°。(頸部)屈曲30°・伸展55°。MMT:左右上下肢4レベル。筋緊張:頸部筋緊張亢進。常時過伸展位。Hoehn-Yahrの重症度分類:4度。UPDRS:59/147。FIM:85/126。排泄は、ポータブルトイレ(以下Pトイレ)自立で行っていた。<BR>【目的】<BR> 本症例は、当老健入所時より移動動作時、複数回転倒を認めている。今後、すくみ足等の歩行障害の症状における転倒予防の為、ベッド周囲移動動作のリスクの減少を図る。<BR>【介入】<BR>車椅子上、頸部過伸展予防を図る為に、ポジショニング実施。その後、視覚マーカーを作製し、すくみ足減少をサポートした。<BR>【結果】<BR> ポジショニングにより頸部過伸展減少し、視野拡大され視覚による情報入力量増加する。また、視覚マーカー非使用時、使用時の平均所要時間は、ベッド→Pトイレで0.79秒、Pトイレ→ベッドで0.49秒、ベッド→車椅子で0.01秒の短縮、車椅子→ベッドでは、0.41秒の延長となった。すくみ足出現回数は、全ての移動時合計で、視覚マーカーなし:28回、視覚マーカーあり:7回と著明に減少がみられた。<BR>【考察】<BR> 本症例の当老健での転倒時の状況より、すくみ足による歩行障害が、転倒要因の1つであると考えられた。今回の介入により、すくみ足出現回数が著明に減少した。それにより、視覚刺激としてのマーカーが、踏み出しを誘発させる動機付けとなり、すくみ足等の歩行障害が改善される可能性が認められた。今介入以降、Pトイレ移動時等における転倒報告はされていない。今回は、視覚に焦点をあてたが、今後は歩行周期など動作分析に着目してアプローチしていきたい。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2011 (0), 19-19, 2011
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680601184768
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- NII論文ID
- 130006984708
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可