変形性膝関節症の重症度と疼痛・心理面の関連性

  • 田中 創
    特定医療法人整肢会 副島整形外科クリニック
  • 山田 実
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻

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【目的】<BR> 変形性膝関節症(以下,膝OA)は退行性・進行性の疾患であるが,臨床上,その重症度と疼痛の程度が必ずしも一致しないことを多く経験する.そこで今回は膝OAにおける変形の重症度と疼痛との関連性を検討した.さらに,近年では痛みの経験を破局的にとらえる「破局的思考」と疼痛の関連性が指摘されており,その因子を測定する尺度であるPain Catastrophizing Scale(以下,PCS)を用いて膝OAに関与する疼痛の因子について調査した.<BR>【方法】<BR> 対象は当院にて膝OAと診断された者24名(男性:5名,女性:19名),平均年齢:65.9±12.4歳である.疼痛の評価にはVisual Analog Pain Scale(以下,VAPS)を用いた.さらに,疼痛に対する心理的因子を測定する尺度としてPCSを使用した.PCSはSullivanらによって作成された原版を,松岡らが日本語版に翻訳したものを使用した.PCSは痛みに対する破局的思考を測定する尺度で,13項目の質問形式からなり,そこから更に「反すう」「拡大視」「無力感」の3つの下位尺度に分類される.「反すう」「拡大視」「無力感」はそれぞれ,痛みについて繰り返し考える傾向,痛み感覚の脅威性の評価,痛みに関する無力感の程度を反映するとされる.その他に,疼痛に影響すると考えられる一般的因子として,年齢,発症日からの日数,膝OA の重症度(Kellgren Lawence分類:以下,KL分類)をあわせて調査した.本研究では回答が得られた27名のうち,内容の不備等を除き,最終的に24名の結果を用いて統計解析を行った.<BR>【説明と同意】<BR> 対象者にはその趣旨を十分に説明した上で同意を得た.また,本研究は当院の倫理委員会による承認を得た上で実施した.<BR>【結果】<BR> Spearmanの相関分析の結果,年齢とPCSの間(r=0.419~0.562)およびVAPSとPCSの間(r=0.416~0.642)に,それぞれ中等度の有意な相関関係を認めた(P<0.05).なお,膝OAの重症度とVAPS,PCSの間には有意な相関関係は認められなかった.<BR>【考察】<BR> 本研究の結果より,膝OA患者では年齢の増加に伴い破局的思考が強くなることが分かった.特に,下位尺度の項目より,年齢の増加に伴い無力感が増していることが示された.さらに,主観的な疼痛の訴えが強いほど破局的思考も強くなり,これは特に疼痛のことを繰り返し考える傾向,無力感を抱いている傾向にあることを示す.一般に変形の重度化に伴い疼痛が増強することが考えられるが,本研究の結果より変形の重症度と疼痛には必ずしも関連性がないことが分かった.<BR>【まとめ】<BR> 今回の結果より,膝OAの重症度と疼痛には必ずしも関連性がないことが分かった.また,膝OAの疼痛には構造的因子だけでなく,年齢や心理的因子が関与していることが伺えた.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680601357440
  • NII Article ID
    130006984870
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2011.0.24.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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