人工呼吸器離脱を目的とした理学療法介入の試み

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  • ~人工呼吸器装着下での歩行訓練を経験して~

抄録

【はじめに】<BR> 人工呼吸器管理の離脱において歩行訓練が有効であるとの報告がみられる。神津らは、呼吸筋訓練を施行するよりも四肢筋の運動を中心とした全身運動療法が人工呼吸器からのweaning率やADL、予後において有効であると報告している。今回、長期人工呼吸器管理症例に人工呼吸器離脱を目的とした歩行訓練を中心に行い、呼吸器離脱、在宅復帰可能となった症例を経験したので報告する。<BR>【症例紹介】<BR> 70歳代男性、体重111.5kg、BMI:41。既往歴に2型糖尿病、COPDがあり、HOTは使用せず病前のADLは自立していた。呼吸困難、両下肢浮腫認め、当院受診し心不全にて入院となる。<BR>【経過と理学療法】<BR> 第1病日夜間にて意識レベル低下、高炭酸ガス血症にて挿管・人工呼吸器管理となる。第2病日肺炎球菌感染を疑う所見あり、抗生剤開始する。第4病日以降NPPV装着を何度か試すが、本人のストレスが強く、第23病日気管切開し、TPPV管理となる。第14病日より理学療法開始。気管切開後、医師の離床許可にて人工呼吸器装着下での離床・下肢筋力訓練を開始した。<BR> 離床開始時の評価では、JCS:1桁、頷きや筆談にてコミュニケーション可能。設定はPSV:8cmH2O、O2:5l/min、PEEP:5cmH2O、呼吸数28回/分、VT:310ml。四肢MMT:3程度、基本動作は起き上がり、端座位、起立、移乗とも中介助、FIM:43点であった。理学療法は、端座位訓練や起立・着座訓練を中心に行った。第37病日よりon-off法開始、第39病日より人工呼吸器装着下での歩行訓練を開始した。リスク管理の面から理学療法士と看護師2名体制で行い、1日2回休憩を入れながら、数回の5M歩行を開始した。第62病日目には日中のoffの時間が延長し、第77病日に人工呼吸器離脱となった。歩行距離は40M×4回程度まで可能となり、訓練中SpO2:95%(O2:2l/min)、P:90代、呼吸数25回/分と呼吸状態も安定。四肢MMTは4程度まで改善し、基本動作は起き上がり、端座位自立、起立、移乗監視レベルとなり、ADLはFIMで68点まで改善した。また、体重も89kgへと減少した。第168病日目、経口摂取可能となり、基本動作・ADLは入浴以外自立、FIMは114点まで改善。体重は86kgまで減少した。連続100M程度のT杖歩行にて自立し、HOT (O2:1l/min) にて在宅復帰となる。<BR>【考察】<BR> 今回、呼吸器離脱が可能となったのは、人工呼吸器装着下での歩行訓練を中心とした全身性訓練が有用であったと考えられる。本症例は、COPDと高度肥満による換気不全と長期人工呼吸器管理による呼吸筋力低下を中心とした、廃用症候群を有していた。歩行訓練は、骨格筋力回復や全身持久力の改善だけでなく、体を動かすことで組織の酸素需要が増加し、換気量が増大する。その結果、分泌物の移動が促進され、気道クリアランスにも有効であり、それらの効果が呼吸筋疲労を軽減させ、バイタルサインの安定や呼吸器離脱に繋がったと考えられる。また、歩行訓練を行うことで、身体機能の回復を実感でき、訓練への意欲向上がみられたことも、在宅復帰可能な身体機能レベルまで改善したと思われる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680601621504
  • NII論文ID
    130006985126
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2011.0.55.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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