仙骨部褥瘡を合併した脊髄損傷の一症例
書誌事項
- タイトル別名
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- クリニカルパスと比較して
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説明
【はじめに】<BR>当センターでは脊髄損傷・脊椎変性疾患に対して、早期離床・退院、合併症予防を目指し術後の早期リハを積極的に行っている。今回仙骨部褥瘡により訓練に長期間を要した症例に対しアプローチを実施し、クリニカルパスとの比較・検討することで若干の知見を得たので報告する。<BR>【症例紹介】<BR>第1腰髄損傷の70歳男性。仕事中高所からの転落にて第1腰椎破裂骨折し、3週間後後方固定術を施術。受傷3ヶ月後当センター入院となる。入院時Frankel分類Aで、SLR70度、上肢筋力は肩関節3・肘関節4・手指3~4・下肢0で、仙骨部にはステージ3の褥瘡、ポケットの大きさは10×20cmであり、背臥位・座位禁止となった。<BR>【理学療法アプローチおよび経過】<BR>入院翌日よりベッド搬送にて午前・午後リハビリ開始。初期時は下肢ROM制限、上肢筋力低下がみられた。また尿路感染による発熱と、手指機能低下により薬の袋を開けることが出来ないなどの訴え、精神的落ち込み・感情失禁があり、長時間の訓練は出来ない状態であった。入院1・2・4ヶ月後に計4回褥瘡の掻爬・縫合術が行われ、この間は背臥位・座位禁止のため、ベッド上側臥位にて下肢ROM・上肢筋力増強を中心にアプローチを進めた。入院2ヶ月半後より褥瘡に負担をかけない程度での起立訓練が許可となり、起立移動器にて全身状態の向上と立位でのPush up訓練を行った。入院5ヶ月後に座位が許可され車椅子乗車となるが、脊柱・下肢のROM低下や上肢筋力の不足により訓練台上動作、移乗は困難であった。積極的に筋力増強・動作訓練を行い、6ヶ月経過した時点で、前方移乗・更衣自立、起き上がり軽介助、側方移乗中等度介助。未だ褥瘡ポケットは5×3cmで存在し排泄・入浴はアプローチ出来ていない。<BR>【考察】<BR>クリニカルパスによると、受傷1週間後車椅子乗車しマット上座位・Push up動作訓練を開始し、ほぼ3ヶ月でADLが自立する。本症例においては褥瘡治療により長期臥床を強いられ車椅子乗車に8ヶ月を要した。その後の訓練においては、前方移乗の自立はクリニカルパス通り進み2週間で獲得できたが、起き上がり・側方移乗はクリニカルパスと比較して2週間ほど遅れている。これは長期臥床による脊椎の可動性の低下や上肢筋力低下の影響によるものと思われる。本症例は元より力仕事をしていたこともあり早期より積極的に開始出来ていれば筋力低下の問題もなくアプローチが進められたのではないかと考える。<BR>【おわりに】<BR>褥瘡の発生は関節拘縮や筋力・体力低下などの2次的合併症を引き起こし訓練の阻害因子となるだけでなく、自立可能な動作も獲得できなくなることがあり、患者・家族の負担も大きい。早期より積極的なリハを実施し、起こりうる合併症を予防することが必要である。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2008 (0), 58-58, 2008
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680601669120
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- NII論文ID
- 130006985170
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可