慢性閉塞性肺疾患を有する大腿骨近位部骨折患者について

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抄録

【はじめに】<BR>大腿骨近位部骨折患者は高齢者に多く、種々の併存疾患を有していることが多い。その中で呼吸器疾患は生命予後に直接的に影響する疾患とされる為、術後のリハビリテーションを実施する上でも特に留意すべき疾患である。現在、慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)は罹患人数が推定500万人に上るとされている。近年、当院でもCOPDを有する大腿骨近位部骨折患者が散見されるようになった。そこで今回、術後リハビリテーションにおけるCOPDの影響について調査・検討したので報告する。<BR>【方法】<BR>対象は2005年4月から2009年3月の期間当院で手術を受けた大腿骨近位部骨折患者315名の内、受傷前は自宅生活し移動能力が杖歩行以上の条件を満たす43名とした。その中でCOPDを有した群(COPD群)8例とCOPDを有しない群(対照群)35例に区分した。なお重度認知症、他科へ転科例は除いた。<BR>調査方法は診療記録より後方視的に1:年齢、2:BMI、3:術前待機日数、4:術後PT介入開始日数、5:術後リハ室への移行に有した日数、6:歩行獲得(平行棒、歩行器、杖それぞれの獲得日数とし、術後から算定した)に有した日数、7:PT実施日数、8:在院日数、9:転帰とした。以上のパラメーターについて調査・検討した。統計学的処理は対応のないt検定(有意水準5%)とした。なお、今回の調査において当院の倫理委員会より承認を受けている。<BR>【結果】<BR>年齢:COPD群85.1±5、対照群84.2±6.4 BMI:以下同様に18.3±1.4、20.8±4.6 術前待機日数:4±2.8、4.6±2.8 術後PT介入開始日数:3.3±2.6、3.1±2.6 術後リハ室への移行に有した日数:5.9±2.8、5.5±3 歩行獲得へ有した日数:平行棒5.9±2.8、8.4±6.6、歩行器17±10.6、18.4±10.2、杖33.6±14.2、28.5±13.6 PT実施日数:41.9±17.8、54.6±24.1 在院日数:60.9±26.4(死亡した一例を除く)、80.9±30であり、いずれも有意差は無かった。転帰はCOPD群自宅5例(62%)、転院2例(25%)、死亡1例(13%)、対照群自宅28例(80%)、転院7例(20%)であった。<BR>【考察】<BR>COPD患者は呼吸機能低下や低栄養状態に陥りやすく、全身状態の悪化が起こりやすいとされている。その為術後リハビリテーションへの影響が考えられた。しかし、今回の調査ではCOPD群、対象群間で有意差は得られなかった。現在COPDを有する大腿骨近位部骨折患者についての報告は多くはない。今後さらに増加していくことが予想される為、症例数を増やし調査・検討していく必要があると考える。

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  • CRID
    1390282680601992704
  • NII論文ID
    130006985453
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2010.0.278.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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