着衣のサイズの違いが深部体温に与える影響について

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抄録

【目的】<BR> 運動には、それぞれのユニホームがあるが、そのサイズの違いが、身体にどのような影響をもたらすかについては、明らかにされていない。そこで、同じ形状で異なった2種のサイズで軽い運動を行わせ、深部体温に新しい知見が得られたので報告する。<BR>【対象】<BR>  対象者は健常な若年男性8名(年齢21.6±0.8歳、身長174.8±7.0cm、体重64.6±6.0kg(mean±SD))である。<BR>【方法】<BR>  着衣はUNDER ARMOUR社製METAL COLD GEAR(以下ギア)を用いた。ギアサイズの違いは2サイズ違う着衣方法をとらせた。 運動は、室温19℃前後の環境にて十分な安静座位後、ギアを着衣させ10分間安静座位を取らせた。その後時速4kmでトレッドミル歩行を10分間行わせた。測定は、舌下温、脈拍数、血圧を測定した。 舌下温はTERUMO社製MODEL CTM-205を用い、血圧はOMRON社製デジタル自動血圧計HEM-770A、脈拍数はTEIJIN製PULSOX-M24を使用した。統計処理は対応のあるt検定にて処理した。<BR>【結果】<BR> ギア着衣後安静座位10分経過で舌下温は小さいサイズで着衣前の安静時より0.24±1.22℃上昇し、大きいサイズで0.26±1.08℃低下したが有意差は認めなかった。脈拍数は共に平均で3回/分程度の違いであった。10分運動経過の舌下温は小さいサイズで安静時より0.13±0.12℃上昇し、大きいサイズで0.03±0.25℃低下し5%の危険率で有意差を認めた。脈拍数は共に15回/分上昇し、収縮期および拡張期血圧は共に10mmHg以下変化であった。(mean±SD)<BR>【考察】<BR> 衣服の違いは、小さいギアは全身を圧迫し、大きいギアは圧迫のない状態を呈した。杉本らは衣服の圧迫が皮膚の真皮層にあるルフィニ小体を介し、間脳視床下部ある体温調節中枢に作用し徐々に皮膚温が上昇させると報告している。今回の結果より、衣服の密着度が強い着衣であれば、運動を行わせなくても深部体温を上昇させることができることが明らかになった。軽い運動時の深部体温においては、宮川らは暑熱負荷や運動負荷があまり強くなく、発汗量が中等度以下の状態では皮膚圧迫の発汗抑制効果が著明に現れると述べており、小さいギアでは皮膚圧迫が起こり、皮膚圧‐発汗反射により発汗が抑制され汗の蒸発による熱放散が低下したため深部体温が大きいギアより上昇したと考えられる。 Michelleはストッキングなどで強く圧迫すると、圧迫したものが断熱材として働く効果があり、局所の表在性の組織温度を上昇させる効果があると述べている。今回小さいギアは室温19℃と寒い環境で断熱効果をもたらしたのではないかと考える。<BR>【まとめ】<BR> 健常な若年男性8名に対して、サイズの異なる着衣を行い舌下温、脈拍数、血圧を測定した。結果、サイズの小さい着衣は、安静座位の状態でも舌下温を上昇させ、運動時では大きいサイズの着衣より有意に舌下温を上昇させることを認めた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680602010624
  • NII論文ID
    130006985486
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2010.0.354.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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