背伸びの効果
書誌事項
- タイトル別名
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- -臨床での視点より-
説明
【はじめに】<BR> 近年,動作に対する体幹深部筋の重要性が指摘されており,臨床においても,腹式呼吸等を用いた体幹深部筋へのアプローチがよく行われている.しかし,高齢者に対して腹式呼吸を指導していく中で,体得させ難いことをよく経験する.野沢らは,超音波診断装置を使用した調査で,2WayStretchを行うことにより体幹深部筋の一部である腹横筋が有意に働くことを示唆している.方法は,理想的な背伸びである.そこで今回,腹式呼吸と背伸び,両者実施前後でのバランス能力,歩行に着目し比較検討したのでここに報告する.<BR>【対象】<BR> 身体に重篤な既往のない外来高齢者11名(男性1名,女性10名,平均年齢76.6±5.7歳)を対象とした.<BR>【方法】<BR> 対象者11名に対し,腹式呼吸運動,背伸び運動の2種類の運動を実施し介入前後での比較を行う.バイアスを取り除くために各運動は1日以上空けて実施することとする.腹式呼吸運動では体幹深部筋の収縮を確認させながら,それを10回実施.背伸び運動では坐骨支持での座位を開始姿勢とし,そこから頭部を随意的に最大限上方へもっていき,そこで30秒間姿勢保持を2回実施.<BR> 比較は,重心動揺計(ANIMA社製GRAVICORDER GS-3000)を使用した動的検査,Timedup&Go Test(以下TUG)にて行う.動的テストでは,上肢を前で組んだ状態での静的立位から開始し,重心をできるだけ前に移動しその肢位を3秒間維持した後,開始肢位に復位するという動作を前後左右に実施.その時のX軸,Y軸の最大幅で求めた面積であるREC.AREA(以下矩形面積)を使用し訓練前後での比較を行った.<BR>【結果】<BR> 矩形面積においては,腹式呼吸運動では5.26cm2の増加,背伸び運動では3.85cm2の増加,TUGにおいては,腹式呼吸運動では1.09秒の短縮,背伸び運動では0.68秒の短縮という結果であった.<BR>【結果に対する考察】<BR> 比較した両者ともに,矩形面積においては移動面積増加,TUGにおいては時間短縮という傾向がみられた.その結果の数値だけを比較すると,腹式呼吸運動のほうが背伸び運動に比べ改善傾向を認めた.つまり,腹式呼吸運動ができるものにとっては,こちらを選択した方が良いといえる.ただし,冒頭に述べたように腹式呼吸を体得させ難いものについては,背伸び運動は体幹深部筋へのアプローチとして有用な運動方法であるといえる.また,運動実施した被験者からは「歩きやすくなった」「簡単で運動しやすかった」等の意見が聞かれ,臨床において被験者が行いやすく有効な運動ではないかと考える.<BR> 今後は,この『背伸び』という簡便な方法を用いた効果検証の症例数をさらに伸ばし,より理想的な動かし方,より分かりやすい指導の仕方を見出し,患者様に貢献できるよう努力していきたい.
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2010 (0), 32-32, 2010
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680602036608
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- NII論文ID
- 130006985530
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可