重症パーキンソン病患者8例に対する起立‐着席運動

DOI
  • 江口 武志
    医療法人羅寿久会 浅木病院 リハビリテーション科
  • 小田原 創
    医療法人羅寿久会 浅木病院 リハビリテーション科
  • 松本 淳志
    医療法人羅寿久会 浅木病院 リハビリテーション科
  • 加来 剛
    医療法人羅寿久会 浅木病院 リハビリテーション科
  • 中野 綾子
    医療法人羅寿久会 浅木病院 リハビリテーション科
  • 下山 洸平
    医療法人羅寿久会 浅木病院 リハビリテーション科
  • 加藤 亜美
    医療法人羅寿久会 浅木病院 リハビリテーション科
  • 三好 安
    医療法人羅寿久会 浅木病院 リハビリテーション科
  • 三好 正堂
    医療法人羅寿久会 浅木病院 リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • 廃用による機能障害に対するアプローチ

抄録

<p>【はじめに】</p><p>「パーキンソン病(以下,PD)治療ガイドライン2011」によれば,運動療法の有効性を示す報告は散見される.しかし,軽症者(Yahr分類Ⅱ,Ⅲ)の歩行障害を対象とした研究が主であり,歩行不能となった重症者(Yahr分類Ⅳ,Ⅴ)に対する運動療法の効果について検討された報告は稀である.今回,8例の重症PD患者(Yahr分類Ⅳ,Ⅴ)に対して起立-着席運動を行ったところ,全例でADLが改善し下肢筋力の強化が得られた.ここに介入方法と具体的結果について報告する.</p><p>【対象】</p><p>2011年~2015年にPDの治療・リハビリテーション目的にて当院へ入院したPD患者8例を対象とした.男性4例,女性4例.年齢68.1±4.6歳.罹病期間13.9±5.6年で,Yahr分類ではⅣ4例,Ⅴ4例であった.</p><p>【方法】</p><p>介入法は主に起立-着席運動を行った.平行棒を把持し,椅子の高さを35㎝~50㎝の範囲で調整し可能な限り自主的に行える高さに設定した.入院時に自主運動が行えなかった3例は介助にて行った.実施期間は4週間(週7日).PT,OT各3単位/日と,集団で起立-着席運動を約2時間/日行った.入院時と4週後のFIM運動項目(以下,FIM-M),10m歩行時間,歩幅,膝伸筋力を測定した.膝伸筋力はIsoforceGT-330(OG技研)を使用し,左右平均値を求め,健常者平均値に対する%とした.別に体重比(膝伸筋力kg/体重kg)を計算した.</p><p>【結果】</p><p>起立-着席運動は1日平均279.8±63.5回行えた.入院時運動に介助を要した3例は4週目までに全例自主運動が可能となった.治療結果:歩行能力は,入院時介助歩行であった7例は全例監視歩行となり,不能であった1例は介助歩行に改善した.10m歩行時間は入院時53.0±47.8(秒),4週後28.0±20.4(秒),歩幅は入院時0.21±0.12(m),4週後0.29±0.08(m)になった.移乗能力は,入院時監視を要した4例は全例自立し,入院時介助を要した4例のうち1例は自立し,2例は監視に改善し,1例は介助のままに終わった.FIM-Mは入院時43.8±12.4から4週後61.3±12.3になった(利得:17.4±7.5).膝伸筋力は入院時19.3±10.1(kg)から4週後31.8±13.9(㎏)になり,健常者に対する%で示すと25.8±11.7(%)から42.4±15.9(%)になり,体重比では0.34±0.16(㎏/㎏)から0.57±0.20(㎏/㎏)になり,全例に改善が見られた.</p><p>【考察】</p><p>パーキンソン病の運動障害は,疾患そのものの進行による一次的要因と,低活動のために生じる二次的要因の複合によると考えられる.今回レボドパ製剤など薬物療法の効果が減弱した慢性期の重症PD患者(Yahr分類 Ⅳ,Ⅴ)を対象とし,起立-着席運動を主に介入手段として用いた.三好は重症者ほど強力なリハビリが必要で,PDのリハビリにおいても起立-着席運動が有効であると述べている.また中馬は,PDは低活動により廃用症候群を起こしやすく,下肢筋力は訓練により改善することを指摘している.今回我々の症例では全例において介入後に下肢筋力,ADLの改善を認めたことから,入院前に廃用症候群があったと考えられた.近年推奨されているPDの運動療法としてトレッドミルや聴覚刺激による歩行訓練などがあるが,いずれも重症PD患者に対して実施困難と言える.起立-着席運動は歩行よりも筋活動が多く,危険が少なく,簡単に行える運動として知られている.今回の検討では,重症PD患者に対する運動療法として起立-着席運動は実施しやすく,かつ効果が期待出来る.PDの重症者に対する運動療法の一つとして起立-着席運動の有用性を提案したい.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の倫理審査員会の承認を得た.また,対象者に研究について十分な説明を行い同意を得た.製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費,サービス等は一切受けておらず,利益相反に関する開示事項はない.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680602168192
  • NII論文ID
    130005175223
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2016.0_1
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ