寝返り動作と肩甲帯可動性との関連
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説明
【目的】<BR>一般的な寝返りでは上肢と下肢を挙上させ、頭部・体幹は肩甲帯を先行させる動作になることが多い。しかし、その動作は多様で画一的ではない(Richter 1989)。特に、頭部・体幹にその傾向は強く、それらの機能が寝返り動作に影響していることが考えられる。また、寝返り動作は下肢から開始することが多い(角 1995)。このことから、下肢動作パターンは頭部・体幹機能に関連している可能性がある。そこで、今回、頭部・体幹機能として肩甲帯の可動性に着目し、下肢動作パターンとの関連について検討した。<BR>【対象と方法】<BR>運動器・神経系に既往歴がなく、かつ肩甲骨および肩関節の関節可動域制限がない健常者24名(男性;6名、女性;18名、平均年齢32.5±8.6歳)を対象とした。<BR>方法は、背臥位より「寝返って下さい」との口頭指示のみ与え寝返り動作をビデオカメラで撮影した(対象者の尾側で、プラットホームより3m、高さ1.6mに設置)。その分析より、寝返り動作開始時に寝返り側と反対側下肢を挙上させる対象者を屈曲優位パターン(flexor pattern;FP)、寝返り側と反対側下肢を伸展させる対象者を伸展優位パターン(extensor pattern;EP)とし、その2群に分けた。次に、肩甲帯の可動性評価として立位で左右のApleyのScratchテスト(ASテスト)を用い、橈骨茎状突起間の距離(AS橈骨間距離)をメジャーにて計測した。そしてFP群とEP群とでのAS橈骨間距離を比較した。<BR>本研究では、その趣旨を十分に説明し対象者の承諾を得て実施した。統計には対応のないt検定を用い、有意水準は5%とした。<BR>【結果】<BR>FP群は11名(男性;6名、女性;5名)であり平均AS橈骨間距離は35.2±8.3cm、EP群は13名(女性;13名)であり平均AS橈骨間距離は28.2±3.2cmであった。FP群とEP群ではAS橈骨間距離に有意差を認めた(P<0.05)。<BR>【考察】<BR>ASテストは挙上側肩甲骨の外転・上方回旋と非挙上側肩甲骨の内転・下方回旋の動きが組み合わさったものである。そのテストにおいて肩甲骨の複合運動は基より、それに伴う体幹の伸展が生じる。つまり、長年FPで寝返りを行っている人は表現型として日常的に屈曲優位姿勢を用いる傾向が強い。この表現型の影響によって、ASテストでの肩甲骨の複合運動に必要な体幹の伸展が生じにくいため、EP群との比較においてFP群のAS橈骨間距離が大きくなったと考えられる。よって、健常者における寝返り動作時の下肢運動パターンは、肩甲帯の可動性に関連していることが示唆された。<BR>今回の研究では肩甲帯に着目したが、寝返り動作には体幹や頭部の可動性要素も関与していると考える。今後は、これらを含めた寝返り動作の研究を行うことで、動作分析への一助になると考える。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2010 (0), 73-73, 2010
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680602229120
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- NII論文ID
- 130006985709
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可