活動時間と消費カロリーの精神科作業療法の一例

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  • 患者の価値を認めることで新たな価値を育む

抄録

【はじめに】<BR>  長期入院中の40代男性(以下症例)の主治医より肝臓の検査結果が悪いため精神科作業療法(以下OT)で体重減量に取り組めないかとの処方があり、OTを実施しその後、変化が現れたので報告する。<BR> 【症例紹介】<BR> 年齢:40代前半。性別:男性。診断名:心因反応。職業:漁業。最終学歴:中学卒。現病歴:X/8/2、母親が心筋梗塞で死亡後発病。X/9/4、医療保護入院。X+1/9/30、任意入院へ変更。入院以来、体重が増加傾向で経過しており入院時54kgであった体重がOT開始時には78kgになっていた。また肝機能低下の所見があり主治医より体重を減らすよう指導があったが実践できないでいた。<BR> 【OT評価】<BR>  長期の入院により現実感・現実検討力の低下、自主的な社会活動への参加の機会の減少がみられた。自分の意思を伝えることが困難。精神的に未発達で責任感、セルフケア、自己管理能力、日常生活技能の熟練度が低い。ゲーム・アニメなど興味あることには強い執着がみられた。<BR> 【OTプログラム】<BR> 1.今回のOTの目的を伝え、OTは本人の自由意志のもとで行い、いつでもそれを撤回することができ、それによる不利益を被ることがないことを約束。<BR> 2.活動時間と消費カロリーとの取り決めを行う。<BR> 3.消費カロリー計算方法はMETS法を用いる。<BR> 4.毎月1回体重体脂肪測定を行う。測定器:タニタ体内脂肪計TBF‐410<BR> 6.頻度:5~6回/週<BR> 7.内容:消費カロリー計画表作成・身体運動・趣味活動・体重の変化の記録<BR> 【経過】<BR>  初め3ヶ月間は体重変化が見られなかった。次に面接を行い目的と目標を明確にし、食事指導も併せて行った。6ヶ月後から体重の減少がみられた。毎月の体重体脂肪・腹囲の測定結果をパソコン(以下PC)に入力した。<BR> 【結果】<BR> 1.期間:10ヶ月(平成21年6月~平成22年3月)<BR> 2.身体的変化[体重:78kg→69kg/体脂肪率:32%→26%/BMI:28.1→24.8/腹囲:99cm→91.2cm] <BR> 3.生理的変化[TG:276→114/LDH:258→211/GOT:52→23/GPT:91→28/γ‐GPT:71→23] <BR> 4.服薬の変化[EPL6cap→中止] <BR> 【考察】<BR>  症例は以前よりOTに参加しており、内容はTVゲームやPC、レクリエーションなど自分の興味あるものであった。また身体運動を促すも目的意識を持つことが困難で自発的に取り組むことができなかった。そこで今回は症例がゲーム・アニメ等に強い興味・価値を持っていることを利用し、それを退院という目的のもと、働くための健康的な体作りという明確な目標を定めることで新たな価値を作り遂行する意志に変換することができたと考えられる。同時にそれを習慣的作業へと定着させ体質改善を成功させることができた。またPCに体重の変化を記録することや主治医、薬剤師との面接で自己の変化を認めてもらうことにより自主的、客観的、肯定的フィードバックを図ることができた。それらのことが症例の課題への自主的で継続的な取り組みとなり、よりよい結果を導き出せたと考えられる。<BR> 【まとめ】<BR>  これは人間作業モデルにおいて形作られているモデルであり、認知療法の手段と併せて今回それを施術し実証することができた。精神科作業療法の分野でも新しいモデルを用い、エビデンスを集積し、明確な治療法として確立していく必要性を強く考えさせられる研究となった。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680602236032
  • NII論文ID
    130006985722
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2010.0.65.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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