大腿骨近位部骨折患者の排泄動作とBerg Blance Scaleとの関係

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抄録

【目的】<BR> 入院患者にとって排泄動作の自立がニードとして多く挙げられており、日常生活場面においてもかかせない項目である。排泄動作は、下衣の着脱など姿勢の変化が見られる動作であり、立位での静的・動的バランス能力が必要であると考えられる。ADLの中でも早期に獲得したい項目であるが、自立度判定の指標となりえる研究やADLと立位バランス機能の関係についての報告は少ない。そこで今回、大腿骨近位部(頸部、転子部)骨折術後患者の排泄動作に着目し、バランス評価ツールのひとつであるBerg Balance Scale(以下BBS)との関係について検討した。<BR>【方法】<BR> 平成22年1月から平成23年3月に当院入院した大腿骨近位部骨折術後患者55名(男性10名、女性45名、平均年齢80.4±8.5歳を対象とした。なお認知症や著しいコミュニケーション障害を呈した者は除外した。<BR> 方法は、BBSを測定しFIM(トイレ動作)とBBSの14項目との相関をみた。統計解析には、Spearmanの順位相関計数を用い検討を行った。なお、有意水準はp<0.05とした。<BR>【結果】<BR> FIM(トイレ動作)とBBSすべての項目でrs=0.4以上の相関が得られたが、そのなかでも「起立」rs=0.739(p<0.01)「物拾い」rs=0.724(p<0.01)「閉脚立位」rs=0.721(p<0.01)の項目に強い相関が得られた。<BR>【考察】<BR> 今回、FIMとBBSの項目について検討した。「起立」「物拾い」「閉脚立位」に強い相関が得られた。<BR> 排泄動作の構成要素として座位保持、起立、立位保持、着衣の上げ下げ、陰部の後始末などがあげられる。起立は、座位保持から体幹の屈曲・膝伸展を伴う上下の重心移動、物拾いは着衣の上げ下げの際、膝屈伸を伴う体幹屈曲・回旋動作、閉脚立位は、立ち上がりからの立位保持という動的から静的状態への移行する姿勢保持に関与すると考えられる。<BR> これらの結果から排泄動作には、立位での体幹屈曲・回旋動作・重心移動など複合的な安定した静的・動的バランスに関与することが考えられる。<BR> 臨床においても一連の動作の中で、どのような動作が排泄の自立を妨げる要因となっているのか明確に抽出していく必要がある。また個人の尊厳を守る為にも排泄動作の早期自立は優先課題であり自宅復帰するためにも重要な動作であると考える。<BR>【まとめ】<BR> FIMとBBSの「起立」「物拾い」「閉脚立位」に強い相関がみられ、排泄動作自立には立位での静的・動的バランスが大きく関与していると考えられる。<BR> 今後症例数を増やし、「起立」「物拾い」「閉脚立位」の三項目に着目し、臨床応用していきたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680602240896
  • NII論文ID
    130006985730
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2011.0.96.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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