下腿切断後の膝関節伸展可動域訓練に重錘を用いた一例
書誌事項
- タイトル別名
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- 徒手関節可動域訓練を禁止されたなかでの試み
抄録
<p>【はじめに】</p><p>今回、交通外傷により両下腿切断を要し、断端形成術後に右下腿創部癒合不良のため創部を開放し創内持続陰圧洗浄療法をおこなった症例のリハビリテーションを経験し、特に膝関節伸展可動域訓練(以下膝伸展ROM訓練とする)方法に苦慮したが、一定の効果を得られたためここに報告する。</p><p>【症例および経過】</p><p>23歳男性、トラック乗車中の交通事故により近医救急病院搬送。両下肢ともに轢断であり損傷が激しく同日断端形成術施行。術後右下腿断端長5cm、左下腿断端長13cmであった。翌日より右創部より排膿が認められ、第5病日後に右断端創部を開放、デブリードマンした後、持続陰圧洗浄療法開始。第14病日後より理学療法介入開始となった。介入時の主治医からの安静度指示は、右膝関節に関して膝ROM訓練は実施して良いが創部を開放しているため徒手療法は禁止とのことであった。そのため、右膝関節に対して徒手的なROM訓練以外の方法を考える必要があった。</p><p>【方法】</p><p>理学療法介入1日目から7日目までは仰臥位にて自動運動での膝伸展ROM訓練を実施。頻度は1日2度、膝伸展自動運動を10回1セットとし、2セット実施。介入8日目から自動運動に加え、重錘を用いた膝伸展ROM訓練を開始した。今回用いた手法は、患者は腹臥位となりベッド端から下腿を出した状態で下腿後面に重錘をのせる。重錘の重量は1kgから開始し、最終的に4kgまで増量した。頻度は1日2度、3分間重錘にて膝関節伸展の持続伸張を毎日実施。実施期間は60日間であった。</p><p>【結果】</p><p>右膝関節伸展角度の経過は、理学療法介入1日目(自動運動のみ):-90°、7日目:-60°、8日目(重錘でのROM訓練開始):-55°、13日目:-35°、21日目:-10°、34日目以降:-5°であった。左膝関節伸展角度の経過は、理学療法介入1日目:-35°、7日目:0°であった。</p><p>【まとめ】</p><p>今回、同一患者において診断名は左右とも同じ下腿切断ではあるが、左右の下肢で異なる治療経過をたどった。近年我が国では閉塞性動脈硬化症や糖尿病による血行障害による切断の割合が増加しているが、外傷性による切断は切断部位によっては感染の危険性が高くなる。今回は右下腿の創部に感染がおこったことで、右下腿のみ創部開放し持続陰圧洗浄療法が選択され徒手でのROM訓練が禁止された。下腿切断は膝関節屈曲拘縮を呈しやすく、一度膝関節が拘縮してしまえば義足装着訓練の遅延や将来的に義足歩行獲得の阻害につながりかねない。また、下肢切断理学療法診療ガイドラインにおいても、早期の運動療法の介入は1年後の生存率と自宅退院率において大きく関連があるとされており、運動療法の推奨グレードB、エビデンスレベル3となっている。今回、徒手的関節可動域訓練が禁止された状況でも限られた方法で関節可動域訓練を実施することで断端の治癒を妨げることなく関節拘縮の予防がおこなえ、関節可動域の改善がおこなえることが示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本報告の実施に際し、対象者に十分説明をおこない、同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2016 (0), 217-217, 2016
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680602490624
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- NII論文ID
- 130005175350
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可