低負荷反復運動時における耳朶皮膚表面温度変化と体組成調査
説明
<p>【目的】</p><p>運動療法実施時のモニタリングは重要であり、非侵襲的かつ簡便で定量的に行うことが出来れば、国民の健康向上の一翼を担える可能性が考えられる。福村らのグループが、第49回日本理学療法学術大会にて、低負荷反復運動における耳朶皮膚表面温度の変化について報告しており、耳朶皮膚表面温度測定による運動実施時の生体モニタリングの可能性が示唆されている。しかし、耳朶皮膚表面温度を利用した、運動実施時のモニタリングに関する報告は散見されない。そこで本研究では、低負荷反復運動時における耳朶皮膚表面温度と体組成を調査し、基礎的データ収集を目的とした。</p><p>【方法】</p><p>対象は、本校在籍中の学生で、ボランティアとして参加協力が得られた健康な男性10名、女性10名とした。対象者は半袖・半ズボン、室温は空調にて24度設定とした。5分間の安静にて室温順化後、トレーニング機器(レッグプレス)にて、運動負荷量を体重の1/3(低負荷と規定)とし、低負荷反復運動を行わせた。1往復の伸展屈曲を8秒ペースとし、10往復を1セット、計3セット実施。セット間の休憩は30秒とした。温度測定に関して、1)腋下温を運動直前と運動直後に計測、2)左示指皮膚表面温度ならびに左耳朶皮膚表面温度を赤外線放射温度計にて、運動直前・運動直後・運動終了後1分・運動終了後2分・運動終了後3分・運動終了後4分・運動終了後5分と測定した。体組成に関して、体成分分析装置(InBody570)にて体脂肪量ならびに骨格筋量を計測し、体重比として、体脂肪率ならびに骨格筋量/体重比として算出した。統計学的手法は、腋下温に関して対応のあるT検定、示指ならびに耳朶皮膚表面温度に関して多重比較検定、温度変化量と体組成に関してピアソンの相関分析を行った。</p><p>【結果】</p><p>腋下温に関して、男性において運動直前(36.55±0.4度)と運動直後(36.6±0.36度)間に有意差を認めず、女性において運動直前(36.2±0.64度)と運動直後(36.46±0.53度)間に有意差を認め(P=0.04)、有意な相関を認めた(r=0.83,P<0.01)。示指皮膚表面温度に関して、男性・女性共に有意差を認めなかった。耳朶皮膚表面温度に関して、男性において有意差を認めず、女性において運動直前(26.21±1.45度)と運動終了後5分(27.6±0.95度)間に有意差を認めた(P<0.05)。女性における運動終了後5分-運動直前(温度変化量)に関して、運動直前と温度変化量間に有意な相関を認め(r=-0.76,P<0.01)、体脂肪率と運動直前耳朶皮膚表面温度間に有意な相関を認め(r=0.71,P=0.02)、骨格筋量/体重比と運動直前耳朶皮膚表面温度間に有意な相関を認めた(r=-0.68,P=0.02)。</p><p>【考察】</p><p>今回、体重の1/3を低負荷と規定して反復運動を実施し、女性において、腋下温ならびに耳朶皮膚表面温度において有意な変化を認めた。また、体脂肪率ならびに骨格筋量/体重比において、運動直前の耳朶皮膚表面温度と有意な相関を認めたことから、耳朶皮膚表面温度を利用した、運動実施時のモニタリングの可能性が示唆された。今後さらにデータ数を増やし、運動実施時における耳朶皮膚表面温度と性差や体組成との関係に関して、詳細なデータ収集の必要性があると考える。</p><p>【まとめ】</p><p>低負荷反復運動時の女性における耳朶皮膚表面温度に変化を認め、体組成との関係性の可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は倫理審査委員会の承認を得た研究である(承認日 平成27年9月16日)。 また研究実施に際し,対象者に研究について十分な説明を行い,書面にて同意を得た。 研究者へ提供される謝金等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。</p>
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2016 (0), 172-172, 2016
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680602522112
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- NII論文ID
- 130005175295
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可