足部潰瘍患者の歩行ーPhaseに着目した足圧動画解析

DOI
  • 大塚 未来子
    社会医療法人 敬和会 大分岡病院 総合リハビリテーションセンター
  • 澁谷 博美
    社会医療法人 敬和会 大分岡病院 総合リハビリテーションセンター
  • 山口 篤史
    日本フットケアサービス株式会社

抄録

【はじめに】<BR>近年、PADやDMによる足病変患者が急増しフットケアの重要性が認識されつつある昨今、理学療法士の関わりが希薄であることが現状である。創傷・切断の要因の一つに鶏眼・胼胝形成があり、局所的な足底圧上昇を認める。さらに足底圧と歩行の関係は密接であり、フットケア患者の歩行評価は救肢(limb salvage)活動そのものである。今回、難治性足部潰瘍を呈したフットケア患者を担当し、創部発生要因である歩行を、足圧計を用いて評価した。「創傷を治す」ために我々理学療法士が出来ることは何かを模索しながら治療に携わったので、考察を加え報告する。<BR>【症例紹介】<BR>20代、男性、身長156cm、体重41kg、診断名:右第5趾化膿性骨髄炎に伴う難治性潰瘍、基礎疾患:先天性二分脊椎症、現病歴:2年程前より歩きすぎたことで右第5趾中足骨部に胼胝形成し、形成外科受診。デブリードマン及び皮弁形成術施行し、一旦治癒するも、創悪化を繰り返し、現在に至る。創部状態:長さ30mm×幅9mm×深さ8mm、腫脹・血漿性浸出液あり、身体評価:両足内反変形・足趾クロウツー、足底感覚鈍麻、ROM足背屈0°・外反-5°、第1MTP底屈位、GMT足2~3レベル、歩行は足内反底屈歩行・ADL自立している。<BR>【足圧評価】<BR>機器はWalkwayMW-1000プレダスMD-1000(アニマ社)を使用し、定常歩行の患肢3歩目を解析した。圧力分布測定結果では2次元・3次元圧力線にて、患部圧(平均値6.6kgf-10cm2)を確認した。圧力の経時的記録では、全接地時間(0~0.7秒内)の76%にあたるphase(0.07秒~0.6秒)のLS~TSに持続的な患部圧が確認された。最大値は、瞬時0.5秒のMS~TS移行期に8.8kgfを示した。また圧中心点経過的記録では、接地0.5秒後のTSにX軸の速度変化(0.1秒間に20cm/s上昇)と加速度変化(400cm/s^2まで上昇)を認めた。<BR>【考察】<BR>本症例の足部潰瘍の原因は、LR~MSにかけて中足部外側に偏る持続的圧負荷と、TSにみられる内反方向への回旋力が瞬間的に加わることで生じる圧中心点の加速度変化が、患部圧上昇に関与していることが示唆された。これは、足内反底屈からの接地に加え足背屈制限・1MTP伸展制限があることで、重心の外側偏移が生じ、第5趾中足骨に多大な圧がかかる。さらに、TSという踏み返しが圧上昇を助長するイベントとなっている。そこで、歩行様式を踏み返しの無い揃え形の免荷歩行に変更、除圧インソールを作成し、関節運動改善・アライメント修正を行った結果、治療経過2ヶ月で創部治癒に至った。今回、潰瘍の発生機序とされた歩行を、足圧動画解析することで、患部にかかる足底圧と歩行の関連性を明らかにできた。また、ビジュアライズされた足圧結果は、患者理解を深め、効果的な治療へと繋がった。「創傷を治す」ために理学療法士が出来ること。それは、足圧と歩行との関連性を的確に評価し、除圧目的の治療を展開することである。今後、理学療法士の専門性が、フットケア発展の一助となればと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680602604160
  • NII論文ID
    130006986058
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2010.0.140.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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