乳幼児四つ這い動作の再考~上下肢運動に着目して~
説明
【目的】<BR> 四つ這いは発達の指標の一つとしてよく知られているため,実際の子育て相談などの場面でも母親からの相談が多いのが現状である.四つ這い運動は,左右肢交互的あるいは同時的運動であること,上下肢の協調を要する運動であり乳児期の四つ這い運動は体幹や四肢の発育や運動の発達にとって重要な刺激となることが推察される.さらに,瀬川は自閉症とレット症候群に関する研究から,四つ這いや上下肢協調運動を有する二足歩行が脳を活性化し高次機能の発現に関与することを報告している.このように四つ這いは,単なる移動手段というだけでなく,発達そのものを牽引する重要な意味を持っている.しかしながら,四つ這い動作の詳細な分析やその特性について詳しく述べられているものは少ない.そこで本研究では乳幼児の四つ這いについて自然観察を行い,四つ這い動作を構成する身体各部位の特徴的な動きをとらえ,月齢,四つ這い期間などとの関連性について検討を行った.<BR> 【方法】<BR> 長崎市内の子育て支援センターを利用している神経学的・整形外科的な問題がない乳児の中から,本研究に関する説明を行い保護者より同意の得られた12組(男児7名,女児5名)の母子を対象とした.そのうちデジタルビデオカメラの撮影中に四つ這い動作がみられた8ヶ月から1歳1ヶ月までの10名(男児7名,女児3名)のデータを使用した.また,母親への情報収集として月齢,四つ這い開始時期,四つ這いを行っている期間などを聴取した.<BR>【結果】<BR> 今回観察された四つ這い動作では,推進する際に足指を使うことは少なく,膝を支点にした前方への重心移動で移動を行っていた.また,四つ這い時に殿部が落ち込んでいる児では骨盤後傾位で股関節の動きに乏しい傾向が,殿部が挙上し腰部フラットで保持可能な児では片手支持でのリーチ動作が姿勢安定して容易に可能であるという特徴も観察できた.さらに四つ這い位のベースが広い児では,片足のみ高這いのような蹴り方をするなど下肢の使い方に左右差があることが観察された.上記に挙げた特徴と月齢や四つ這い開始時期,四つ這い期間など関連性については,児によって四つ這いのバリエーションがさまざまあり明確な傾向を見ることは出来なかった.<BR> 【考察】<BR> 今回,四つ這い動作観察を行い四つ這い動作時の上下肢の使い方に注目した.四つ這い時の上下肢運動は児によってバリエーションに富んでおり,月齢や四つ這い開始時期,四つ這い期間との関係性はみられなかった.正常な四つ這い動作に関しての報告はほとんどなく,どのような四つ這い動作がその後の運動発達や上下肢の機能に影響するのかということを細かく検討するには縦断的な追跡調査が必要になってくると思われる.また,四つ這い動作の特徴に関して子どもの育つ住環境などの要因も考えられるため,家屋状況の調査を行うことも重要になってくると考えられる.
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2010 (0), 132-132, 2010
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680602621056
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- NII論文ID
- 130006986077
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可