良性発作性頭位めまい症を呈した症例に対する前庭リハビリテーションの効果
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説明
<p>【目的】</p><p>良性発作性頭位めまい症(BPPV)は,回転性のめまい,頭痛,吐き気,嘔吐などの症状を引き起こし離床の遅延や日常生活の制限によって身体機能およびQOLを低下させる。また,めまい症状は,めまい誘発動作を回避することでめまいの悪循環が形成され,慢性化するとされている。めまいに対する治療としては前庭リハビリテーション(VR)が効果的であるとされ,また慢性めまいについては認知行動療法が有効であると言われている。認知行動療法は,めまいの改善,慢性化予防に重要である。今回,転倒後にBPPVを呈した症例に対するVRを施行し,めまいの改善と慢性化を予防できたので報告する。</p><p>【方法】</p><p>対象は,上肢機能障害に対する外来リハビリテーション中であった70歳代女性である。本症例は自宅での転倒により頭部を打撲し,その3日後,めまいが出現しBPPVと診断され,リハビリテーションの指示が出た。理学療法評価は頭位変換眼振検査としてDix hallpike test(DHT),Roll test(RT)を用いた。DHTとは,頭部を45°回旋させた座位から懸垂頭位,またその逆を行い,その際の眼振の有無をみることで判断する方法である。またRTは,寝返りのように頭位を水平方向に回転させた際の眼振の有無をみることで判断する。また,めまいによる障害の総合評価であるDHIは,身体面のPhysical(DHI-P),感情面のEmotional(DHI-E),機能面のFunctional(DHI-F)で構成されており,25項目100点満点で,点数が高いほど障害が重いとされている。VRとして,耳石置換法(Epley法,Lempert法),頚部運動中の固視機能を改善させるAdaptation,めまい症状を誘発する動作への慣れを促すHabituation,低下した前庭機能を他の機能で代償するSubstitutionを行った。</p><p>【結果】</p><p>初期評価では,起き上がりや頭部上下動を伴う動作時にめまいが誘発され,買い物等が困難となり日常生活に支障をきたしていた。DHTは右側で陽性,RTは陰性であり,後半器官型BPPVの症状が追認された。めまいによる障害度では,DHIが40/100点(DHI-P:8/28点,DHI-E:16/36点,DHI-F:16/36点)であった。VR開始後,Epley法の施行にてDHT陰性となり,1か月でめまい症状が改善し,ADL拡大を認めた。その2週間後,新たに寝返り時の回転性めまいが出現し,RTが陽性であったため外側半規管型BPPVに対するLempert法を施行し,2週間でVR終了となった。VR終了時の評価は,DHT,RTともに陰性,DHIは0/100点であり,前庭機能障害,めまいによる障害度ともに改善した。</p><p>【考察】</p><p>本症例の回転性めまいは,耳石置換法により半規管に混入していた耳石が排出され,三半規管からの頭部回転加速度情報の左右差が修正されたことで改善されたと考えられる。また,本症例はめまい発症から1か月以上経過し,慢性化のリスクを有していたことから,慣れの促しである眼球運動やめまい誘発動作練習(行動)がめまい誘発動作に対する不安を緩和(認知)させ,めまいに対する認知行動療法として慢性化を予防できたと考えられる。</p><p>【まとめ】</p><p>BPPV発症後,めまい症状が持続する症例に対する耳石置換法と認知行動療法を併用したVRは,めまいの慢性化予防に有効な可能性がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本報告はヘルシンキ宣言を遵守した。対象者の情報は,匿名で取り扱い,個人情報が特定できないよう処理を行い,収集した個別の情報の閲覧は,本報告者および協力者とした。また,患者に本報告の意義と目的を説明し,同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2016 (0), 253-253, 2016
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680602634752
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- NII論文ID
- 130005175422
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可