外反母趾患者の歩行分析

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  • F‐Scanを用いて

抄録

【はじめに】<BR> 外反母趾患者の歩行特徴として観察上、アーチの低下に伴う足部全体の回内や母趾や足趾の蹴り出しが不十分など様々な特徴が見受けられる。また主訴として歩行中のMTP関節痛や第2中足骨頭下の胼胝痛を訴える者が多い。従って動的な状態での観察をすることが重要と考える。そこで今回動的な状態での足底圧分析が可能な足圧分布測定システム(F-Scan)を用いて、外反母趾患者の歩行中の足底圧の分析を行い、健常者と比較することで外反母趾患者の歩行の一特徴が得られたので報告する。<br>【対象】<BR> 当院整形外科にて外反母趾と診断された(以下HV群)女性21例42足、平均年齢45.9±19.4歳。対照群として肉眼的及び症状的に外反母趾を呈しておらず、他にも身体症状のない健常人(以下健常群)女性9例18足、平均年齢35±9.9歳(統計学的に有意差は認められなかった)<br>【方法】<BR> F-Scan(ニッタ社製)を用い、センサーシートを測定用靴の底に敷き、硬い平坦な床上を裸足で6秒間自然歩行してもらった。そのうちの平均的な3歩行周期分の足底圧を検出した。足底圧の評価は足全体・踵部・中央部・前内側部・前中央部・前外側部・母趾部に分け、各領域における荷重圧(kgf/cm2)と荷重時間(sec)の積分値(以下積分値)を求めた。各領域の3歩行周期分の積分値を平均した値を足全体の積分値で除した比率値(以下比率)を求め、HV群と健常群で比較した。またHV群においてはX線所見として外反母趾角(以下HV角)第1・2中足骨間角(以下M1/M2角)を胼胝の有無及び大きさの観察を行った。統計処理は2群間の比較には対応のあるt検定を、相関関係にはPeasonの相関係数を算出した。<br>【結果】<BR> 比率について、中央部においてHV群0.11±0.06、健常群0.07±0.04(p<0.05)前中央部においてHV群0.27±0.05、健常群0.23±0.06(p<0.05)とHV群が有意に高い値を示した。母趾部においてHV群0.06±0.04、健常群0.08±0.04、踵部においてHV群0.35±0.08、健常群0.38±0.06であり、両者とも統計学的に有意差は認められなかったがHV群が高い傾向を示した。他の前外側・前内側に於いて有意差は認められなかった。相関関係については中央部と母趾部に負の相関(r=-0.48、p<0.01)中央部とM1/M2角に正の相関(r=0.37、p<0.05)M1/M2角と母指部に負の相関(r=‐0.45、p<0.01)、HV角とM1/M2角に正の相関(r=0.38、p<0.05)母指部と前中央部に負の相関(r=-0.35、p<0.05)、前中央部と胼胝に正の相関(r=0.32、p<0.05)母指部と胼胝に負の相関(r=-0.032、p<0.05)という結果が得られた。HV群の平均HV角は35.5±9.95、平均M1/M2角は17.1±4.22、胼胝の有無は27足(64%)に認められた。<br>【考察】<BR> 今回の結果から、外反母趾患者は健常群と比べ中央部と前中央部の比率が有意に高い事がわかった。中央部については内側縦アーチの状態を表している部位と思われ、アーチの低下により比率が高くなったのではないかと思われる。前中央部は第2中足骨頭下の胼胝の範囲を含んでおり、胼胝の大きさとの相関が見られた。また相関関係の結果から、M1/M2角の拡大は母趾への荷重を困難にし、それに伴い前中央部の荷重量が増え、胼胝を形成していると考えられる。Caillietによると内側縦アーチの低下は足趾の外転(M1/M2角の拡大)や母趾の回内に影響を与え、母趾は外反ストレスを受けやすく、前足部のアーチも低下し胼胝を形成しやすい環境へと変化すると言われており、この意見を支持する結果が得られた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680602859392
  • NII論文ID
    130006986270
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2004.0.41.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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