脳卒中後片麻痺患者の起立動作における麻痺側下肢への荷重量が、麻痺側上肢の運動野興奮性に及ぼす影響
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- 経頭蓋磁気刺激装置の運動誘発電位を用いた予備的研究
Description
<p>【はじめに、目的】</p><p>脳卒中後片麻痺患者では、非麻痺肢の過剰使用により脳梁間半球間抑制のアンバランスが生じ、損傷側脳活動の抑制増大のため回復が阻害されると言われている。脳卒中後片麻痺患者に対する起立練習は簡易に実施でき、脳卒中ガイドライン2009では起立着座訓練を頻回に行うことを歩行能力改善のために強く勧めている。しかし上記理論で考えると、非麻痺側下肢優位での起立運動が麻痺側上肢の麻痺回復を阻害している可能性を考えた。我々の知る限り、麻痺側下肢の荷重量の違いで、起立動作前後で上肢由来の第一次運動野(上肢M1)の脳の興奮性がどのように変化するかについての報告はない。そこで予備的研究として、2名の片麻痺患者に対し、起立動作時の下肢荷重量を測定すると共に起立動作前後での上肢M1の興奮性の変化について経頭蓋磁気刺激装置(TMS)を用いて検討した。</p><p>【対象と方法】</p><p>対象は起立動作が可能で、上肢M1で安静時運動誘発電位(MEP)を記録できる脳梗塞後片麻痺患者2名(患者A ・B)とした。患者Aは60歳代 女性、体重53Kg、病巣は右運動野並びに感覚野、発症後9カ月で上田式12段階片麻痺グレードは左上肢12、手指12、下肢11。患者Bは 50歳代男性、体重82Kg、病巣は右放線冠、発症後13カ月で上田式12段階片麻痺グレードは左上肢7、手指7、下肢8。両者共右利き、MMSE30点であった。研究方法はTMS (MagPro R30、Magventure社製)と8の字コイルを使用し、2日に分けて行った。1日は麻痺側下肢の荷重量が体重の50%となるよう介助下で起立動作を行い、もう1日は介助なしで実施した。起立動作方法は10回を1セットとし、合計3セット一定の動作速度で行った。メトロノームを使用し、2秒で起立、2秒で着座、1秒休みのリズムで行い、セット間は2分の休憩を設けた。両足底に体重計を置き荷重量は検査者が確認した。評価は右上肢M1領域の頭皮上にコイルを当て、安静時運動閾値の120%の強度で刺激し、左第一背側骨間筋から安静時MEP振幅を記録した。各起立動作の前後でMEP振幅を10回記録し、その平均を求めた。</p><p>【結果】</p><p>患者Aでは介助ありの麻痺側荷重量は各平均23.5Kg(体重の44.3%)、介助なしでは19.3Kg(体重の36.3%)であった。MEP振幅値は、介助ありでは起立動作前に比べ1セット後にMEP振幅が35.4%、2セット後に0.8%、3セット後に10.7%下降した。介助なしでは起立前から1セット後に12.7%、2セット後に28.6%、3セット後に11.0%下降した。患者Bでは、介助ありの麻痺側荷重量は各平均46.3Kg (体重の56.4%)、介助なしでは45.0Kg (体重の54.8%)であった。介助ありでは1セット後にMEP振幅が29.5%、2セット・3セット後に88.5%上昇した。介助なしでは1セット後に20.9%、2セット後に13.3%、3セット後に89.4%上昇した。起立動作後のMEP振幅は、荷重量が非麻痺側優位の患者Aでは低下し、麻痺側優位の患者Bでは増大した。また患者Aの麻痺側荷重量の測定結果より、慢性期脳卒中片麻痺患者では麻痺側下肢へ十分な荷重をかけるよう調整することは、介助下でも困難であった。</p><p>【考察】</p><p>麻痺側への荷重量の少ない患者Aでは起立運動後のMEP振幅値が低下し、逆に麻痺側へ十分に荷重可能な患者BではMEP振幅値が起立運動後に上昇したことから、起立訓練時の下肢への荷重量が上肢M1の興奮性に影響することが推察された。今回の結果を踏まえて急性期より、麻痺側下肢へ多く荷重をかける練習方法にすることで、下肢・体幹機能だけでなく麻痺側上肢の運動機能向上にも良い影響を与えることが考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は当院の研究倫理委員会の承認を受け、対象者から書面による同意を取得後に実施した。</p>
Journal
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- Proceedings of Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
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Proceedings of Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu 2016 (0), 8-8, 2016
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680602954240
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- NII Article ID
- 130005175439
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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