GPIアンカーを中心とするタンパク質の脂質による翻訳後修飾の解析
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- 田口 良
- 東京大学大学院医学系研究科メタボローム寄付講座
書誌事項
- タイトル別名
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- Analysis of post-translational modifications
説明
蛋白質の脂質による翻訳後修飾は、蛋白質の生体膜への結合様式や、蛋白質の局在化の制御に密接に関係している。結合している脂質分子は、リン脂質の一種であるホスファチジルイノシトール(PI)を含む糖脂質、ミリスチン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、ファルネシル基、やゲラニルゲラニル基等のイオプレノイドがある。これらの翻訳後修飾の解析にはソフトイオン化質量分析法が有効である。特に、ESI!)MS/MS分析のプレカーサースキャンやニュートラルロススキャンという、プレカーサーイオンの測定とフラグメントイオンの測定をリンクさせて行う方法を用い、ペプチド混合物の中から、ある特定のフラグメントイオンを持つプレカーサーイオンだけをすべて検出するという方法で、翻訳後修飾を持つペプチドのみを特異的に同定できる。GPI(glycosylphosphatidylinositol anchor)アンカー蛋白質と呼ばれる一群の蛋白質は、PIと蛋白質のC末端ペプチドが糖鎖を介して結合し、そのPIの疎水性領域であるdiradylglycerol部位により細胞膜の脂質二重層の外側に埋め込まれている形をとるものである。 GPIアンカーの糖鎖とイノシトールを含む構造は、脂質部分をPI特異的ホスホリパーゼCにより分解除去し、可溶化したタンパク質のC末端ペプチドを解析するという手法により行った。脂質部分の構造解析は、亜硝酸でグルコサミンとイノシトールの結合を切断し、遊離されるPIについて、脂質メタボローム解析の手法にもとづいて行った。さらに、LC-ESIMS又はESIMS/MSを用いて直接C末アンカーペプチドを効率よくスクリーニングできないかを検討し、ESIMS/MSのCIDスペクトラムによりGPIアンカー糖鎖に特徴的なフラグメントイオンを同定した。このフラグメント情報を元にLC-ESIMSにより遺伝子情報が得られていない蛋白質からもC末アンカー構造をもつペプチドの溶出位置とおおよその構造の解析をすることができた。現在、これらの手法によりGPIアンカータンパク質のプロセシングや生体膜機能との関係を検討している。その他の脂質による翻訳後修飾についてもそれらの特異的フラグメントによる検出法を検討中である。
収録刊行物
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- 日本プロテオーム学会大会要旨集
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日本プロテオーム学会大会要旨集 2005 (0), 12-12, 2005
日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680610017664
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- NII論文ID
- 130006995322
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可