人造物を用いたコテングコウモリ Murina ussuriensis 調査手法の検討

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抄録

 コテングコウモリ Murina ussuriensisは,自然条件下で枯葉等をねぐらとして使用することから,調査手法としてアカメガシワ等の枯葉トラップを用いた手法が有効であることが報告されている.しかしながら,自然由来の植物を調査手法として導入する場合,調査域外からの人為的な持ち込みには生態系保全の観点から配慮が必要である.調査対象域内で生育する植物であっても繁茂時期・状況・状態により確保が困難であるとともに,昆虫類等による摂食,降雨・乾燥等による腐食や脱落により交換の必要が頻繁に生じ,長期にわたる調査や多地点を設定した広域的な調査では多大な労力が必要である.筆者らは,年間を通じて安定した調査を行う手法として,人造物を用いたトラップの検討及び実地試験を行い,コテングコウモリの利用の可否を確認したので報告する.人造物は,竹筒(直径約5cm,長さ約 10cmに切断したもの),麻製布(以下,ドンゴロス )(約 15cm × 15cmに切断し,円錐状に巻いたもの),紙(キムタオル,紙コップ)などを用いてトラップとした.2012年 6月から 2013年 6月の期間に高知県土佐清水市今ノ山周辺の車道沿いに竹筒とドンゴロスを 1地点につき各 10個,計 7地点に設置した.全設置地点で竹筒の利用は認められなかったものの,7月~ 10月の間に 2地点において合計 5個体のコテングコウモリがドンゴロス製のトラップを利用していることを確認した.2011年 10月から 2013年 6月の期間に高知県香美市物部町の山林で設置した紙製トラップでは,秋季を中心にトラップの利用が見られ,枯葉トラップと同程度に利用したものがあった.本種のねぐら利用調査には,人造トラップの使用が有効であると考えられた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680610299904
  • NII論文ID
    130004654721
  • DOI
    10.14907/primate.29.0.193.2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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