離乳期のニホンザル母子に見られる相互交渉:母ザルが乳首接触を許してくれやすい時を子ザルは知っているか?
書誌事項
- タイトル別名
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- Mother-infant interactions in Japanese macaques during weaning: Do infants know when the mother permits them to put her nipple in the mouth?
説明
離乳期のニホンザルでは、母ザルの乳首をくわえようと試みる子ザルに対して、母ザルが拒否行動を示すことがある。本研究では、母ザルの活動内容(毛づくろいを行う・受ける/自己志向性行動/休息/採食・移動)によって子ザルが試みた乳首接触の成功率が異なるのかを調べた。さらに、母ザルが乳首接触を許容しやすい状況があるのならば、子ザルはそのような状況に合わせて乳首接触を頻繁に試みているのかどうかを検討した。勝山ニホンザル集団において、1歳齢の子ザルとその母ザル15組を対象とし、総計225時間の観察を行った。子ザルが乳首接触を試みた場合、母ザルの拒否行動の有無と試みられた瞬間の母ザルの活動内容を記録した。そして、もし乳首接触が母ザルの活動内容とは関係なくランダムに試みられたと仮定した時に期待される乳首接触の生起頻度を算出し、子ザルが実際に乳首接触を試みた頻度と比較した。子ザルが試みた乳首接触の成功率は、母ザルの活動内容によって異なっていた。母ザルは、採食や移動時には頻繁に拒否行動を示したが、自分の子ザルに対して毛づくろいを行っている時や母ザルが他個体から毛づくろいを受けている時に試みられた乳首接触は許容しやすいことが明らかになった。これと対応して、母ザルが採食や移動をしている時は、子ザルは乳首接触を試みることが少なく、母ザルが他個体から毛づくろいを受けている時や自分に毛づくろいをしている時には、子ザルは頻繁に乳首接触を試みていることが明らかとなった。これらの結果は、母ザルが乳首接触を受け入れやすい状況と受け入れにくい状況とを、子ザルが認知している可能性を示唆する。霊長類の知性の進化には、集団の他個体と行う複雑な社会的相互交渉が影響したと考えられている。授乳をめぐる母ザルとのかけひきを通じて、子ザルは他個体と複雑な相互交渉を行うためのスキルを身に付けていくのかもしれない。
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 20 (0), 8-8, 2004
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680610412928
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- NII論文ID
- 130006995834
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可