オランウータンのX線解剖学的検討‐下肢の血管系
書誌事項
- タイトル別名
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- A x-ray anatomical examination in the orangutan-vasculature of the lower extremity
説明
一般に、骨格筋における筋線維型の分布頻度や筋線維の太さは各種哺乳類のロコモーションや行動能力と相関が強いとされている。Kimura T.は“哺乳類の足形態と筋線維の太さについて、蹠行性、趾行性、蹄行性の前脛骨筋による比較(1993)”において15種の哺乳類の赤筋線維、中間筋線維、白筋線維の太さを計測し、前脛骨筋の筋線維の太さは解剖学的な足形態によって規定されると述べているが、この研究によると、オランウータンの前脛骨筋の筋線維は3タイプすべてにおいて15種中最も大径であるという結果が得られている。今回、仙台の八木山動物園にて死亡したオランウータン(オス、メス各1頭)を得たので、鼠径部より血管造影剤を注入後X線にて撮影し、動脈を中心にX線解剖学的に検討、また他の霊長類の文献データとの比較を行った。X線写真では、大腿動脈、膝窩動脈を経て膝窩にて前脛骨動脈、後脛骨動脈に分かれ下腿を下行する血管像が見られ、大腿動脈より大腿近位部にて大腿深動脈が、大腿中間位部にて伏在動脈が順次分岐し、膝窩動脈より腓側方向へと腓骨動脈が分岐していた。伏在動脈は下腿脛側を下行し足背動脈となった後、足底側にも分岐し趾の末梢に終わっていた。後脛骨動脈は踵より足底に入り足底動脈となっていた。以上のことより、樹上性であるオランウータンの下肢の動脈系に関しては、ヒトでは退化してしまった伏在動脈がチンパンジー、ヒヒ、ロリスと同様に存在し、全体的にはチンパンジーとの類似性が強く、特に伏在動脈が足背から足底にもまわり趾の末梢で終わるという点で似ていることが言える。今後、ロコモーションとの関係を考える上で、肉眼解剖学的にも観察しさらに検討を重ねる必要がある。
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 20 (0), 48-48, 2004
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680610456576
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- NII論文ID
- 130006995896
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可