飼育下チンパンジー(<i>Pan troglodytes</i>)の授乳期における発情回帰と性ステロイドホルモン濃度動態との関連性について

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タイトル別名
  • Relationship of genital swelling and urinary sex steroid hormone conjugates of captive chimpanzee in lactational period

抄録

<p>通常、多くの動物種において、授乳期間中は発情が回帰しないことがよく知られている。チンパンジーは周年性多発情動物であり、発情ホルモン濃度に関連して性皮が腫脹する。また、他の動物種と同様に、妊娠および授乳期間中は発情が休止し、性皮の腫脹はみられない。そして、発情回帰は出産からおよそ3年後にみられる場合が多いとされている。しかし、日本モンキーセンターにて飼育されている雌(マルコ:#0582)において、授乳行動が観られているにもかかわらず、出産後75日目に性皮の腫脹が観察され、83日目には交尾行動も確認された。これほど早期に発情が回帰した例は稀であり、その後の性皮腫脹の周期も安定していた。本研究では、授乳期間中の性皮腫脹時の内分泌動態を明らかにするため、尿中発情ホルモン代謝産物(E1G)および黄体ホルモン代謝産物(PdG)濃度動態を酵素免疫測定法により調べた。また、霊長類研究所で飼育されている他の雌3個体(アイ:#0434、パン:#0440、クロエ:#0441)の出産後および発情回帰時の尿中E1GおよびPdG濃度も測定し、動態比較を行った。その結果、授乳中に性皮腫脹が観られた期間、性皮腫脹の増減に伴って尿中E1GおよびPdG濃度動態に周期的な変化が見られた。本種のホルモン動態は、通常の発情周期であれば、尿中E1G濃度ピーク日直後に排卵が起こり、卵巣では黄体が形成される。そして、黄体期は黄体ホルモンに加えて発情ホルモン濃度も上昇することが知られている。しかし、マルコの授乳期間中におけるホルモン濃度動態では、黄体期におけるE1G濃度の上昇は認められず、PdG濃度しか上昇が見られなかった。また、黄体形成ホルモンにおいても陰性反応しか得られず、排卵は起こっていなかったと考えられた。よって、授乳期間中の性皮腫脹では、腫脹の周期に合わせて尿中E1G濃度も周期的な変化を示し、交尾行動も観られたが、黄体期のホルモン濃度動態から排卵は伴っていなかったことが内分泌学的に示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680610534784
  • NII論文ID
    130005418806
  • DOI
    10.14907/primate.32.0_45_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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