ボノボ野生個体群の広域的な遺伝子構造:ミトコンドリアDNAタイプの多様性と分布(予報)
書誌事項
- タイトル別名
-
- Genetic structure of wild populations of bonobos: Diversity of mitochondrial DNA types and their geographical distribution (Preliminary Report)
説明
ボノボはコンゴ川とカサイ川に挟まれたコンゴ盆地の熱帯林に生息しているが、コンゴ盆地内での広域的な遺伝子構造は明らかになっていない。本研究では、多様な遺伝標識を利用し、野生ボノボの集団構造と地域個体群の孤立評価に関する基礎データを収集することを目的とした。ボノボでは、地域間の遺伝子交流に対するメスの寄与が大きいと考えられる。今回、野生個体群のミトコンドリアDNA(mtDNA)変異の多様性や地理的分布を詳しく調査した結果を報告する。<br> ボノボ生息地の7地域で調査をおこない、直接観察やネスト下から新鮮な糞試料を採取した。約150検体につき、mtDNA非コード領域の全塩基配列(約1,130bp)を解読し、クラスター分析で主要なハプログループを特定した。各試料の採集地点情報をもとにハプログループの地理的分布の特徴を検討した。<br> 輸出個体の分析から、従来の研究ではボノボのmtDNAには3つの主要なハプログループ(A, B, C)が報告されていた。しかし、これらの自然分布に関する情報はほぼ皆無であった。今回の調査では、既知の3グループに加えて第4のハプログループ(暫定的にXと呼ぶ)を発見した。ハプログループ分類から比較すると、mtDNAタイプの種類と頻度は調査地による違いが顕著だった。Aグループタイプは広域に分布するものの西端と東端の調査地では確認できなかった。BグループタイプはWambaを除く全ての調査地に分布していた。CグループタイプはWamba周辺に局在していた。さらに、Xグループタイプは東端に局在していた。<br> 今回観察された結果は、河川などの地理的障壁やその地史的変遷に深く影響されている可能性がある。今後さらに検討を加えていく。
収録刊行物
-
- 霊長類研究 Supplement
-
霊長類研究 Supplement 28 (0), 60-, 2012
日本霊長類学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680610697088
-
- NII論文ID
- 130005471439
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可