チンパンジー腕神経叢の観察

書誌事項

タイトル別名
  • Observations of the brachial plexus in Chimpanzee

説明

ヒトをはじめとする哺乳類の腕神経叢,特に内側上腕皮神経(N. cutaneus brachii medialis, Cbm)と肋間上腕神経(Nn. intercostobrachiales, Icb)の起始・経路・分布に注目し,肉眼解剖学的に詳細な調査を行ってきた.<br>ヒトにおいてCbmは,内側神経束の背側層に所属し,第2肋間外側皮枝(RclⅡ)と吻合した後に上腕内側から後面にまわり,上腕後面から肘頭までの皮膚に分布する.なお,Cbmはヒトや一部の類人猿に限って出現し,Cbmを持たない種においてはIcbがその分布領域を補う(相山,1968).<br>我々は,カニクイザルとブタ胎仔においてCbmとIcbの起始・経路・分布を詳細に観察し,CbmとIcbに代償関係が存在すること,また神経の構成分節に差異が生じることを明らかにした(緑川他,2012).さらに,そのような差異が種毎の運動様式の差異に伴って変化する胸郭と肩甲骨の位置関係に影響される可能性を指摘した(緑川他,2012).一方で,ニホンザルとブタ胎仔の皮幹筋支配神経がヒトCbmと類似した走行経路を辿る点にも注目し,ヒトのCbmの成立について比較解剖学的に検討した.結果的に,ヒトのCbmは皮幹筋の支配神経を土台として成立した神経である可能性が示された(緑川他,2013).今回は,運動様式がヒトとマカクの中間に相当する類人猿,チンパンジーの腕神経叢について肉眼解剖学的な観察を行った.チンパンジーの腕神経叢では,内側神経束の背側より分岐し,上腕動静脈の背側を通り上腕内側に分布する皮神経が観察された.また,RclⅡの後枝がIcbとして上腕内側に分布していた.なお,チンパンジーでは皮幹筋は存在しない.以上の所見をふまえ,ヒトおよびニホンザル腕神経叢との比較解剖学的検討を試みた.<br>本研究の一部は京都大学霊長類研究所との共同利用研究によって実施された.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680610980352
  • NII論文ID
    130005471856
  • DOI
    10.14907/primate.30.0_55_1
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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