新生日本モンキーセンターと国際学術誌PRIMATESの未来

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書誌事項

タイトル別名
  • Future perspectives of new Japan Monkey Center and its international journal Primates

抄録

日時 7月6日 9:30-11:30<br>場所 大阪科学技術センター8階大ホール<br><br>この4月から(財)日本モンキーセンター(JMC: Japan Monkey Center)は公益財団法人として再出発しました。同時にその運営に京都大学が大きく関わることになりました。本シンポジウムでは、その改組の内容を説明し、今後JMCの霊長類学に果たすべき役割、とくに世界初の霊長類学の学術誌として発刊され、現在も世界をリードしているPrimatesの在り方について議論したいと思います。<br>JMCは1956年に日本で最初の霊長類学の研究機関として愛知県の犬山市に設立され、翌年には学術誌Primatesを創刊、博物館、世界サル類動物園を増設しながら霊長類と霊長類学の普及に大きく貢献してきました。京都大学と名古屋鉄道が手を取り合ってできた産学協同の先駆けとも言うべき民間の財団であり、文部省所轄の博物館として出発しました。日本で唯一の博物館登録をされている動物園でもあります。<br>日本霊長類学会が1985年に設立されるまで、JMCは毎年プリマーテス研究会を開催して霊長類学を志す人々の集いを促し、普及誌モンキーを発行して一般の人々に霊長類と霊長類学をわかりやすく解説してきました。それらの活動は学界のみならず、日本の社会にも大きな影響を与えたと思います。1960年代から京都大学の自然人類学教室、霊長類研究所、筑波大学の霊長類センター、大阪大学の人間科学研究科などが次々に設立され、下北、白山、志賀高原、金華山、屋久島などニホンザルの自然生息地に研究と保全活動を継続して実施する人々が集うようになりました。1970年代には全国37カ所にニホンザルの野猿公苑が開設され、多くの一般の人々がニホンザルの観察を楽しむようになりました。<br>また、JMCは海外の霊長類にも目を向け、1958年に類人猿調査隊をアフリカとアジアに派遣して世界の霊長類のフィールド研究の先鞭をつけるとともに、モンキー誌に世界各地で実施されている霊長類研究を紹介してきました。以来、日本の霊長類学者によって多くの霊長類生息地で長期にわたる調査が行われ、それらの活動記録はモンキー誌に紹介され、JMCに展示され、研究成果はいち早く英語論文としてPrimatesに掲載されてきました。<br>ただ、この半世紀を振り返ってみると、霊長類を取り巻く自然や社会、学界の動向は大きく様変わりしました。かつて野生ではめったに姿を現さなかったニホンザルが、日本各地どこでも見られるようになったばかりか、人里や畑地に侵入して作物を荒らし、毎年多くのサルが害獣として個体数調整の対象になっています。動物園の数が増えて、ニホンザル以外の霊長類が比較的簡単に見られるようになりました。霊長類学関連の本も多く刊行されています。海外でも日本人以外の霊長類研究者が多岐にわたる研究を展開し、多数の種の多様な生活の様子が写真やビデオで紹介されるようになりました。先進国ばかりでなく、霊長類の生息国である発展途上国で霊長類研究者が育ち、絶滅に瀕している霊長類を保全する取り組みが国際協力によって実施されるようになりました。数々の動物園や実験施設で飼育下の霊長類の研究が進み、心や体の仕組みが詳しくわかってきました。分析技術や分析装置が急速に改良され、これまで不明だった多くのことがDNA試料などを用いて明らかになっています。霊長類学の国際誌も増え、電子ジャーナル化されてインターネットですぐにダウンロードできる仕組みも普及しています。<br>こうした変化に応じて、JMCの役割や活動の内容も新しく組み直さなければならないと思います。今回の改組は初心に戻ってJMCの存在意義を考え、世界に再挑戦しようという意図に基づいています。そこで、長年深い関係をもつ日本霊長類学会の会員の方々から、今後のJMCに望む意見をお聞きし、JMCの将来と国際誌PRIMATESの発展を期したいと思います。<br><br>プログラム<br><br>09:30-10:00 財団法人日本モンキーセンターの歩みと公益財団法人の改組<br>山極寿一(JMC博物館長)<br>10:00-10:30 新しいモンキーセンターとしての動物園構想<br>伊谷原一(JMC動物園長)<br>10:30-11:30 討論<br>コメンテータ:川本芳(京都大・霊長研)、小林秀司(岡山理科大)、中村美知夫(京都大・野生動物)、友永雅己(京都大・霊長研)

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680611058176
  • NII論文ID
    130005471828
  • DOI
    10.14907/primate.30.0_10
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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