シロイヌナズナのストレス適応におけるプリン分解代謝の生理的役割

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タイトル別名
  • Dissecting the physiological function of purine catabolism in stress acclimatization of Arabidopsis

抄録

格段に窒素に富むプリン塩基の分解は,植物の窒素代謝の一翼を担う普遍的な異化代謝とされるが,その生理機能は必ずしも分明ではない。私たちは,シロイヌナズナにおいて当該代謝の初発酵素キサンチン脱水素酵素(XDH)の遺伝子発現がストレス応答する事実に着目し,その逆遺伝学的解析からプリン分解が健常な発生と生育に必要なだけでなく,乾燥ストレスへの適応にも重要な役割を担うことを明らかにした。XDHの発現抑制に起因してプリン分解が破綻した植物では,乾燥処理によって成長阻害や活性酸素の蓄積,細胞死が顕著に促進されるが,今回新たに乾燥に応答した適合溶質プロリンの一過的な蓄積が起こらないことを見出した。このとき,野生株と比較してプロリン合成の律速酵素 (P5CS) のmRNAレベルが有意に低下していたことから,その原因はプロリン合成系遺伝子の発現誘導不全にあると推定された。そこで,野生株を用いてプリン分解物がプロリン代謝関連酵素の遺伝子発現に与える影響を薬理学的に調査したところ,一部の化合物によってP5CSの遺伝子発現が惹起された。以上の結果から,ストレス適応におけるプリン分解とプロリン代謝の生理学的関連性が示唆された。本発表では,特定のプリン分解物を選択的に蓄積する変異株を用いて行っている実験の結果も併せて報告し,ストレス適応におけるプリン分解の生理学的役割について議論する。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680611520256
  • NII論文ID
    130006997274
  • DOI
    10.14841/jspp.2011.0.0957.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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