くくり罠を用いた高捕獲効率および連続捕獲を可能とした誘引誘導型捕獲法の開発

  • 森部 絢嗣
    岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター

説明

近年,野生獣類の増加に伴い,農林業や自然生態系への被害が増えている.一方で猟師等の捕獲従事者は年々減少しており,一定の捕獲圧を確保することが難しくなっている.そのため,捕獲従事者一人当たりの捕獲効率を上げる手法が求められている.くくり罠は,安価で小型であるために扱いが容易である.しかし,くくり罠による捕獲には獣道を的確に発見し,適切な場所へ罠を設置する高度な技術を必要とする.そのため,捕獲を成功させるまでに時間と労力がかかり,捕獲意欲の減退や被害の増大につながっていた.そこでそれらを解消するために捕獲の初心者でも単独で低コストかつ高効率に獣類をくくり罠で捕獲する「誘引誘導型捕獲法」を開発した.本手法は,誘引された獣類を罠へ誘導し,効率よく捕獲する方法である.<br> 試験は,2013年 1~ 3月に岐阜県本巣市内の農地に隣接する森林内(A)と森林に隣接する草地(B)で行った.捕獲対象獣はニホンジカ(以下シカ)とした.誘引餌には米ぬかを用い,誘導体は捕獲場所に既存する直径 15 cm以上,全長 2 m以上の倒木を利用した.罠は OM-40型(オリモ製作販売株式会社製)を Aと Bに 1基ずつ設置した.シカの誘引状況の確認および罠を設置する場所を最適化するためにトレイルカメラ(Trophy Cam HD Max 119476C, Bushnell社製)を用いた.手法は次の通りである. ①誘導体(倒木)上,中央部に約 500 mlの米ぬかを撒き,シカを誘引する. ②十分に誘引された後,罠を餌付近の前肢を置く場所に設置した.その結果, Aでは 4日間で 3頭(捕獲効率:0.75頭 /基),Bでは 2日間で 2頭(捕獲効率:1頭 /基)を捕獲した.捕獲個体に雌雄および齢の偏りはなかった.いずれの場所も,同一場所で同一罠での連続捕獲を可能とした.<br> なお,本研究は岐阜県森林・環境基金「野生動物総合対策推進事業」によって実施された.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680611714432
  • NII論文ID
    130005471649
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_225_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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