東山動物園の飼育ニシゴリラの社会的発達:母と非母の“役割”

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タイトル別名
  • Social development of captive western gorilla at Higashiyama Zoo: “Role” of mother and non-mother

抄録

[はじめに] 協同育児は人類の社会進化の基盤をなすとされる。その進化史を探るうえで、大型類人猿の非母とアカンボウ・コドモの関係は有用な示唆を与えてくれる。昨年度に引き続き、名古屋市東山動物園のゴリラのアカンボウ(キヨマサ)の母親、非母との近接関係と社会交渉を観察,分析した。本発表では、昨年度大会で報告した61~16ヶ月齢にひきつづき、18~28ヶ月齢での結果を報告する。[対象と方法] 2014年5月現在、東山動物園のゴリラの群れのメンバーは、観察対象のキヨマサ、母親のネネ(41歳)、父親でシルバーバックのシャバーニ(17歳)、ネネと別のオスとのムスメのアイ(11歳)の4頭で、アイとシャバーニのムスメのアニー(11ヶ月)が人工哺育されていた。直接観察とビデオ撮影によって行動を記録した。[結果] キヨマサとネネの接触は授乳時以外ではあまりみられなくなった。16ヶ月齢までと比べ、キヨマサとネネが3m以上離れる時間は増加したが、ネネはキヨマサが視界外に移動すると追従した。キヨマサはネネが自分に追従しなかったり、自分から離れると不安を示すことがあった。シャバーニ、アイとの遊びは頻度、時間ともに増加した。16ヶ月齢までと比べ、キヨマサから遊びを誘いかける場面が増加した。ひとり遊びの時間も増加した。母親のネネとの遊びはほとんどみられなかった。シャバーニとアイは、接近するキヨマサを払いのけることはあったが、明確な攻撃行動は示さなかった。ごくまれにネネとアイからキヨマサへの食物分配がみられた。2015年1月にアニーが群れに再導入されると、アニーともよく遊ぶようになった。[考察] ゴリラの非母は、アカンボウに母からは得られない刺激を提供する、子育ちに不可欠な存在だといえる。そして、母親はアカンボウにとってprimary caregiverであるだけはなく、非母-子の社会交渉を監視し調整するfacilitatorでもある。この、母親によるfacilitationは、協同育児の進化における前適応と考えることができる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680611771392
  • NII論文ID
    130005485776
  • DOI
    10.14907/primate.31.0_82_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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