成長円錐のプロテオミクスからわかった新知見

DOI
  • 五十嵐 道弘
    新潟大学医歯学系分子細胞機能学(医学部生化学第二)
  • 野住 素広
    新潟大学医歯学系分子細胞機能学(医学部生化学第二)

書誌事項

タイトル別名
  • New findings based upon the protemic analysis of the neuronal growth cone

抄録

成長円錐は成長期の神経細胞の突起先端に形成される運動性の高い構造体で、神経回路の形成に決定的に重要だが、分子基盤はほとんどわかっていない。その理由は、この部位の分子構成がほとんど理解されていない点にある。演者は成長円錐のプロテオミクスによって、この問題を解決するアプローチを行った。成長円錐(GCP)は細胞分画法に基づく方法で生後2日目ラット大脳皮質から調製し、この標品を低張処理して膜標品(成長円錐膜;GCM)をえた。この両者を2次元LC-LC-MSのshotgun法で合計900種類の蛋白質を同定した(首都大学東京・礒辺教授らとの共同研究)。さらに偽陽性が得られた可能性を否定するため、培養大脳皮質ニューロンで、今回初めて見出された200種類程度の、機能的に重要度の高い分子に関して免疫染色を行ったが、陰性は1件もなかった。上記の免疫染色の画像データから成長円錐への濃縮度を定量化し、成長円錐のマーカーGAP-43に勝る濃縮度の蛋白質を90種類以上見出すことに成功した。これらのうち、50種類のRNAiを行い、そのうちの15種類が神経成長に関係することを証明した。これらの結果は、プロテオミクスの結果を神経生物学の手法と組み合わせることで、神経科学において革新的知見が得られる可能性を明確に示したものといえる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680611891456
  • NII論文ID
    130006997643
  • DOI
    10.14889/jhupo.2007.0.51.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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