統合失調症の発症脆弱因子のプロテオミクス的解析

書誌事項

タイトル別名
  • Proteomics analysis of susceptibility genes for schizophrenia

説明

統合失調症は世界人口の約1%で発病がみられる重篤な精神疾患である。統合失調症患者を対象にした遺伝学的解析から、複数の統合失調症脆弱性因子の変異が発症に密接に関与することが示唆されているが、発症の分子機構は不明である。スコットランドの統合失調症多発家系の遺伝学的解析より、第1染色体と第11染色体の相互転座部位に位置する遺伝子としてDISC1が報告された。相互転座の保因者ではDISC1の発現レベルが低下していると考えられている。  我々はDISC1の機能解析をするために、DISC1結合蛋白質の探索を試みた。アフィニティーカラムクロマトグラフィー法により、ラット脳の抽出液からDISC1結合蛋白質を得た。それらを質量分析により解析した結果、100種以上のDISC1結合蛋白質候補を同定した。新規の分子としてKinesin-1、14-3-3ε、Grb2、既知の分子としてNUDEL、LIS1などの複数のDISC1結合蛋白質を同定した。Kinesin-1は微小菅モーターであり、軸索先端へ分子や小胞の輸送を制御している。NUDEL、LIS1、14-3-3εは複合体を形成し神経細胞の移動を制御することが報告されている。Grb2 は神経栄養因子などのシグナル伝達経路でアダプター分子として機能する。我々は、DISC1がKinesin-1とNUDEL複合体またはGrb2を連結することを見出した。ラットの海馬初代培養神経細胞において、DISC1、Kinesin-1、NUDEL複合体、Grb2は、軸索先端部位で共局在していた。DISC1の発現を抑制した神経細胞では、軸索伸長の阻害が確認でき、NUDEL複合体やGrb2の軸索先端への局在化が阻害されていた。また、NUDELやGrb2がそれぞれ軸索伸長に必要であることを見出した。我々の結果は、DISC1が“積み荷”となるNUDEL複合体とGrb2をKinesin-1に連結させる“積み荷受容体”として機能することで、“積み荷”の軸索先端への局在化に関与していることを示唆している。DISC1の発現量が低下した場合、“積み荷”の正しい場所への輸送が不十分になり、神経細胞の発達に障害が生じると予想される。さらに、DISC1結合蛋白質候補の中から、DISC1により輸送を制御される分子の同定を試みる予定である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680611893504
  • NII論文ID
    130006997647
  • DOI
    10.14889/jhupo.2007.0.53.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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