Inferring chimpanzees‘ emotional states by self-directed behaviours: individual difference during cognitive experiments
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- YAMANASHI Yumi
- 京都大・霊長類研究所
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- MATSUZAWA Tetsuro
- 京都大・霊長類研究所
Bibliographic Information
- Other Title
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- 認知実験中にチンパンジーの受けるストレス:自己指向性行動を指標として
Description
身体をひっかく、顔を手でこするなど、自己指向性行動はチンパンジーのストレスと関連していると言われている。認知実験場面では、誤答の後に生じること、生起頻度が正答率と負の相関を示すことなどが先行研究で報告されている。しかし個体による違いについては検討されてこなかった。そこで、京都大学霊長類研究所のチンパンジー6個体(3組の母子、子どもは7歳)を対象に、認知実験中の行動をビデオカメラで記録し、自己指向性行動の生起を個体ごとに分析した。自己指向性行動を、ひっかく、こする、叩くなどの動作でカテゴリーに分け、さらにどちらの手を利用し、身体のどの部位に向けて行われたかを基準にして区分した。全部で16動作カテゴリー、228種類の行動パターンに分類した。自己指向性行動の種類数も頻度も、個体によって異なっていた。とくに母子で似ているということはなかった。そこで、難易度の低い課題において、正解直後と不正解直後の自己指向性行動の頻度をもとに2群(3個体ずつ)に区分した。Aグループ(N=3)は、不正解直後にはいずれかのカテゴリーの自己指向性行動の頻度が高くなる群である。Bグループ(N=3)は、いずれのカテゴリーの自己指向性行動の頻度も高くならない群である。こうしてグループに分けると、Aグループの個体は、不正解直後の方が正解直後よりも自己指向性行動の種類数が増えていた。また難易度が上がると自己指向性行動の生起頻度が高くなっていた。一方Bグループの個体は、そうした傾向を示さなかった。すなわちAグループの行動は先行研究の結果と合致しているが、Bグループの行動は合致していない。以上からチンパンジーは、認知実験中の不正解や難易度の変化にストレスを受けやすい個体と、それほど受けない個体がいることが示唆された。自己指向性行動はそれぞれのチンパンジーの内面を反映しており、個体ごとのストレスを評価する必要があるといえるだろう。
Journal
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- Primate Research Supplement
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Primate Research Supplement 24 (0), 99-99, 2008
Primate Society of Japan
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680611907328
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- NII Article ID
- 130006997670
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed