マカクの尾椎形態の比較

説明

<br>〔目的〕尾形態は脊椎動物で変異性が高く,霊長類も尾長に高い変異性を示す.ヒト上科の無尾性の進化過程は明らかにされておらず,長尾種から極短尾種までの幅広いマカク属(Macaca)は,尾長進化の良いモデルとなる.Fooden(1975,1988), Hamadaら(2012)は,尾椎長プロフィールでマカク種間の比較をしているが,尾椎の幅・高径について,そしてカニクイザル種郡についての比較研究はまだない.マカク属で尾椎形態の変異性を明らかにし,尾の機能との関連性,尾長の規定要素を明らかにしたい.<br>〔材料と方法〕ニホンザル,アカゲザル,タイワンザル,カニクイザル,アッサムモンキー及びブタオザルの骨格標本の仙骨と尾椎を用いた.尾椎は形態と長さにより,近位部・移行部・遠位部に分けられ,各部の尾椎数を数えた.デジタルノギスを用いて,尾椎の椎体長(頭尾径),高さ(背腹径),横突起幅,及び椎体中央幅を計測した.<br>〔結果と考察〕これら 6種内で,尾椎の数は少ないもので 12個,多いもので 26個であった.また最長尾椎の長さは 13.99mm~37.33mmまでの変異があった.尾椎長は,近位端から V2(2番目の尾椎,以下同)へ減少もしくは微増し,V3から最長尾椎まで急激に増加し,それ以遠で緩やかに減少するパターンが多い.複数種のデータを併せると,マカクの尾椎形態には次のような規則性が認められる:近位部と移行部の尾椎数は,ほぼ一定もしくは尾椎総数に比例して漸増し,最長尾椎の長さ・高さ・幅は尾椎総数に比例して大きくなる.遠位部尾椎はほぼ直線的に小型化し,高さ・幅の最小値は約 2mmになる.しかし最長尾椎から遠位 2,3椎では長さの減少の程度に種による違いが見られる.これは尾椎の個体発生のメカニズムと尾の運動力学的機能によるものであろう.マカク種間での基本からの変異と尾の機能との関連性について,考察する.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680612126976
  • NII論文ID
    130005471571
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_156_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ