東南アジア大陸部の新第三紀後半ウシ類の系統分類

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抄録

 ウシ科(Bovidae)は家畜も含め,汎世界的に分布する反芻類だが,その最古の化石種は前期中新世のヨーロッパから発見されている.現在東南アジア大陸部には,ウシ族(Bovini)が 2属(BubalusBos),カモシカ族(Caprini)が 2属(CapricornisNaemorhedus)分布しており,南アジアを含めても多様性はそれほど高くない.一方,インド・パキスタン地域のシワリク層(後期中新世~前期更新世)からは 9族 40属以上のウシ科化石が発見されており,その中にウシ族の祖先的なグループを含んでいる.本研究では,同年代の東南アジア大陸部から見つかっているウシ科化石を形態学的に再検討し,シワリクの群集および現生種との比較から系統関係を推察した.化石標本は,ミャンマー中部のイラワジ層(後期中新世/前期鮮新世,後期鮮新世/前期更新世)とタイ北東部のターチャン採石場(中期中新世~更新世)から産出した頭骨,角,顎歯,および四肢骨を用いた.頭骨と角の形態に基づくと,イラワジ層下部(後期中新世/前期鮮新世)のウシ科は 5属(Sivaportax,Proleptobos, Pachyportax, cf. Proamphibos, cf. Hemibos),イラワジ層上部(後期鮮新世/前期更新世)のウシ科は 3属(Sivaportax, Proleptobos, Bovidae gen. et sp. indet.),ターチャン採石場は 2属( Pachyportax, Selenoportax)に分類された.このウシ科群集は,(1)現生属を含まない,(2)シワリクで見つかっているウシ族の祖先系統(PachyportaxSelenoportax)を含む,(3)同年代のシワリクと比べて多様性が低い,といった特徴をもつことが明らかになった.

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  • CRID
    1390282680612137088
  • NII論文ID
    130005471577
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_158_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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