飛行機目視調査によるスナメリの個体数推定(3)-有明海・橘湾・大村湾-

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抄録

【目的】飛行機目視調査により,小型鯨類スナメリの個体数を推定する. 【方法】ライントランセクト法にもとづく調査を,日本におけるスナメリの 5主分布域のうち 2海域(有明海・橘湾,大村湾)で行なった.調査方法は Yoshida et al. (1998)によった.本種の岸よりの分布(Kasuya and Kureha, 1979)を考慮し,緯度線に平行な調査コース(海岸線に対しほぼ垂直)を,有明海と橘湾に 1マイル間隔,大村湾に 0.5マイル間隔で設置した.設置数はそれぞれ 42本,16本,26本で,調査時に有明海では 3本に 1本を,橘湾と大村湾では 2本に 1本を,系統抽出し航行した.2名の観察者が小型セスナ機に乗り込み,線上を高度 150m,時速 90ノットで飛行し,それぞれ調査線の片側(横距離 50-450mの間)を探索した.スナメリの群発見時には,位置,時刻,横距離(高度と発見された群に対する伏角から計算),頭数等を記録した.海面反射が探索に与える影響を除くため,調査コースの南側での発見は解析に加えなかった.機体下方向の見落としを考慮し,横距離 80m以遠での発見のみ用いた.Beaufort風力階級 3以上での発見は除いた.小川ら(2013)に準じた有効探索幅をもとに,個体数を推定した. 【結果】2012年 8月 8日に有明海を,9日に橘湾と大村湾を調査した.ともに全域にわたり Beaufort風力階級 2以下の環境であった.有明海では,295.8kmを飛行する間に 75群 100頭を発見した.発見は湾央に集中し,湾奥と湾口でなかった.調査後,帰還時に橘湾央で 6群7頭の二次的発見を得た.橘湾では 224.1kmを飛行する間に湾の西端で 1群 1頭を,大村湾では 186.6kmを飛行する間に 20群21頭を発見した.大村湾での発見は,全域にわたっていた.帰還時に橘湾央を飛行したが,二次的発見はなかった.個体数は,有明海で 2,963頭(密度 =1.9頭/km2,CV=24.8%),橘湾で 37頭(0.04,103.2%),計 3,000頭(1.2,24.5%),大村湾で 168頭(0.5,39.3%)と推定された.

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  • CRID
    1390282680612191744
  • NII論文ID
    130005471508
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_126_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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