ニホンヤマネの自然巣=ヨーロッパ産ヤマネとの比較も加えて=

  • 湊 秋作
    キープやまねミュージアム ニホンヤマネ保護研究グループ 関西学院大学
  • 饗場 葉留果
    キープやまねミュージアム ニホンヤマネ保護研究グループ
  • 岩渕 真奈美
    キープやまねミュージアム ニホンヤマネ保護研究グループ
  • 湊 ちせ
    ニホンヤマネ保護研究グループ
  • 小山 泰弘
    長野県庁
  • 若林 千賀子
    ニホンヤマネ保護研究グループ 若林環境教育事務所

Description

 ヤマネ科は,ヨーロッパ・ロシア・アフリカ,中央アジア,サウジアラビア,イラン・中国・日本等に分布する.ニホンヤマネ(Glirulus japonicus)は,本州・四国・隠岐の島(島後)・九州に生息し,樹上性で冬眠する天然記念物の哺乳類である.私たちは,1988年から巣箱を用いてニホンヤマネの自然史を調べてきたが,巣箱を用いない自然巣の調査結果を得たので報告する.ヤマネの自然巣調査は,目視観察と一部,発信器調査を用いて,1993年から 2012年まで行った.ニホンヤマネの調査地は主に山梨県北杜市で,ヨーロッパ産ヤマネの調査地は,ハンガリー(バーツ市)等である.<br> ニホンヤマネの樹上の自然巣を営巣する樹はヤマツツジであった.営巣する部位はヤマツツジの枝がてんぐす病となり小枝が束状になっている所であった.巣のサイズは,11.0cm × 9.5cm ×9.5cm 程であった.巣材は,樹皮と蘚苔類から構成されていた.樹皮は,サワフタギ,ズミ,ヤマブドウなどの繊維性の材料を使用していた.<br> 巣の構造は,多くの巣において,外側は蘚苔類で覆われ,内部の材料は樹皮で何層にも頑丈に編み込んでいた.巣はてんぐす病の小枝の間の狭い空間にすっぽり入れ込むように造られていた.樹皮をてんぐす病の小枝に巻き付けることもあった.ヤマツツジの枝に接する自然巣の土台には,幅の広い樹皮を用い枝の隙間を埋めるように配置することもあった.てんぐす病の緑の葉と自然巣を覆う蘚苔類の緑色は,カモフラージュの効果を呈していたが,巣の上にヤマネの糞が置かれていることもあった.巣の地上高は,0.65m~2.2mであり,繁殖場所として使用していた.<br> たまに,地中に営巣することもあった.ヨーロッパ産のオオヤマネの巣材は青葉や枯葉であり,ヨーロッパヤマネは,草・葉・樹皮で,ニホンヤマネの巣材とは異なっていた.

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680612212992
  • NII Article ID
    130005471546
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_118_2
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top