国立公園・鳥獣保護区におけるシカ管理の川上から川下まで-統合的なシカ管理体制の構築-

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抄録

 生物多様性保全に向けたシカ個体数管理について,過去の自由集会ではシカの行動特性の把握,個体数管理目標,捕獲手法の確立,捕獲個体の処理方法,技術者集団の育成,法的整備等の課題が整理されている.これらの課題は相互に関連しており,例えば個体数管理目標を策定するには生態系モニタリングは欠かせず,統合して全体調整を行う必要がある.<br> 全国の国立公園・鳥獣保護区で,高密度のシカによる生態系の改変が報告されている.国立公園や鳥獣保護区においては一般狩猟者による個体数調整ができない等の特性があり,特性を考慮して統合的なシカ管理を進める必要がある.本ミニシンポジウムでは,統合的なシカ管理の重要性を再確認し,国立公園・鳥獣保護区における一般狩猟に頼らない総括的なシカ管理について,各地からの報告と共に議論を深めたい. <br>演題1:国立公園・鳥獣保護区におけるシカ管理の課題整理<br>     吉田剛司(酪農学園大)<br> 日本のシカ管理においては,統合的に行われるべき個体数調査,捕獲等は個別に実施されていることが多い.しかし,より効果的にシカ管理を行うにはこれらが有機的につながる必要がある.本発表では現状の課題を整理し,野生動物管理の基本概念をもとになぜ統合的な管理が必要かを論じる. <br>演題2:支笏洞爺国立公園をモデルとした統合的なシカ管理体制の立案<br>     日野貴文(酪農学園大)<br> 統合的なシカ管理を概念だけでなく,全国の保護区等で実行するにはモデルが必要である.そこで,支笏洞爺国立公園をモデルとして,研究者によりシカ個体数調査,生態系影響調査,捕獲手法の検討,地元との合意形成を統合して行った事例を紹介する. <br>演題3:統合的なシカ管理を担う団体のあるべき姿-技術論から体制論へ-<br>     鈴木正嗣(岐阜大)<br> 統合的なシカ管理は,受け皿として担う団体がなければ成立しない.そのような団体には,個体数調査や捕獲といった個別の技術の専門家というより,生物学的・社会学的条件を調整するトータルコーディネーターの資質が必要である.本発表では統合的なシカ管理業務の受け皿としての団体のあるべき姿を提示する. <br>演題4:生態系維持回復事業制度に基づく国立公園における統合的なシカ管理の現状と課題<br>     若松 徹(環境省 自然環境局 国立公園課)<br> 国立公園のシカ管理は,長年,個別の事業や予算に基づく個々の対応に終始していたが,平成 21年6月の自然公園法改正において生態系維持回復事業制度が創設され,生態系維持回復事業計画に基づく統合的なシカ管理が実践され始めている.本発表では,この制度に基づき統合的なシカ管理を実施している国立公園の現状と課題について報告する.<br><b>演題5:総合討論<b><br>コメンテーター:梶光一(東京農工大),石名坂豪(知床財団),自然環境研究センター(常田邦彦)

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680612819712
  • NII論文ID
    130005471783
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_60
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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