角形鋼管柱の動的応答 : 2軸曲げを受ける鋼柱の振動実験(その1)

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  • DYNAMIC RESPONSE OF STEEL BEAM-COLUMNS WITH SQUARE HOLLOW SECTION : Shaking table tests of steel beam-columns subjected to biaxial bending (Part 1)

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抄録

1.序 1方向入力を受ける鋼骨組や鋼柱の振動実験が従来多くなされてきたが、2方向入力の振動実験や振れ振動実験に関する研究は少ない。本研究では1方向及び2方向の正弦波加速度入力を受ける角形鋼管柱の振動実験を行い、解析結果との比較を行う。また局部座屈、亀裂、加振方向、質量偏心及び幅厚比が応答に与える影響について考察する 2. 片持柱の振動実験 2.1 試験体 試験体は冷間成形角形鋼管であり、実験パラメータは幅厚比B/t、入力方向θ及び偏心比e^^-である。表1に測定寸法、幅厚比及び細長比を示す。試験体名中のSBはB/t=18.9、LBはB/t=31.8、Uは1軸曲げ、Bは2軸曲げ、Eは偏心による振れを受けることを表す。LB5UとLB6Bでは、試験部とベースプレートを隅肉溶接しているが、残りではベースプレートに穴を開けて試験部を通し、ベースプレートの上下端で隅肉溶接している。表2に固有振動数の実測値f_oと計算値f_o'、減衰定数力を示す。 2.2 載荷条件 表3に載荷条件を掲げている。降伏軸力と軸力の比である軸力比P/Pyは約0.025〜0.03であり、2軸曲げを受ける試験体の入力方向は45°である。最初に試験体頂部に重錘を置いて軸力をかけた後、徐々に正弦波加速度を入力し加速度振幅を増大させて、試験体を崩壊させた。 2.3 実験装置 図1は振動台上の実験装置である。図2に計測装置を複式的に示す。3個の変位計により試験体の変位及び捩れ角を、2個の加速度計、3個のひずみゲージにより加速度及びひずみを測定した。 3. 動的応答解析 3.1 解析モデル 解析モデルを図3に挙げている。柱脚部の長さdl部分のみ弾塑性変形が可能であり、残りを剛体と仮定した。図4は解析で用いた応力度-歪度関係である。 3.2 1質点系の運動方程式 図3の解析モデルのx、y方向の無次元化された運動方程式は式(4)で与えられる。運動方程式の数値積分にはNewmarkのβ法を用い、βの値を1/4とした。 4. 実験結果及び考察 4.1 SBシリーズ試験体 SB1U : 局部座屈が加振方向と直交方向の断面板要素に発生し、図5 (a)に示すようにy方向の抵抗力が徐々に低下した。最大耐力は破線で表されるメカニズムラインに達したが、y方向の加速度-変位関係のループは負側に寄っていった。SB2B : 45°方向の入力を受ける2軸曲げの試験体であるが、応答は比較的安定しており、x、y方向の挙動はほぼ同じである(図6)。初期段階で局部座屈による耐力低下が見られるが、その後の耐力低下は図5(a)のSB1Uに比べると小さい。SB3E、SB4E : 偏心比が応答に与える影響について調べている。SB3E試験体では局部座屈による急激な耐力低下が見られたが(図7(a))、SB4Eでは明瞭には見られなかった(図8(a))。いずれのケースでも、SB4Eの時刻歴が示すように、捩れ角は小さかった(図8(c))。SB4EはSB3Eに比べて偏心量が大きいため、耐力低下の割合や変形累積の程度が大きかった。 4.2 LBシリーズ試験体 LB1U : 局部座屈発生後、時刻歴における変位vの中心の移動が生じ(図9(e))、最終的には面外方向変位uが生じて崩壊する(図9(d))。LB1Uの挙動はSB1Uの挙動と似ているが、耐力低下はより大きい。1方向入力にも拘わらず面外方向変位が増大していく現象は、解析においても現れた。LB2B : 45°方向に加振されており、x、y方向の挙動はほとんど同じである(図10)。解析で得られた加速度-変位関係のループは、P△効果のためループは定常化しない。LB3E、LB4E : 2つの試験体の捩れ振動の挙動は良く一致しており、捩れ角も小さい(図11、12)。図7、8のSB3E、SB4Eの挙動と比較して耐力低下は大きく、また加速度-変位関係の正側・負側ピークの包絡線の勾配は異なっている。SB3Eで現れた急激な耐力低下はLB3E、LB4Eでは見られない。LB5U : 初期段階で局部座屈が発生し、耐力はメカニズムラインに達しない(図13(b))。また加振方向と直交方向の変位uが増大し崩壊した(図13(a))。柱脚隅肉溶接部において図13(b)の▼印の点で亀裂が発生した。LB6B : 柱脚溶接部に亀裂が発生し断画板要素にわずかな局部座屈が観察されたが、試験体は崩壊しなかった(図14)。x方向の耐力は喪失したが、y方向の履歴ループは最終的にスナップ型となった。 5. 結論 (1)1軸曲げの入力を受ける角形鋼管柱に面外変形が生じたが、これは面内変形がかなり進行してから現れた。(2)大きな幅厚比を有するLBシリーズの耐力低下の割合は、幅厚比の小さなSBシリーズより大きい。しかし両シリーズの全体的な挙動は良く一致している。(3)質量偏心の増加は最大耐力の低下、耐力低下の増大及び面外変形の増大を生じさせる。(4)1方向入力を受け亀裂を生じた試験体では面外変位が増大して崩壊したが、2方向入力時亀裂が生じた試験体では、x方向耐力を喪失したものの崩壊はしなかった。(5)解析は実験における面内の変形累積の発散傾向を概ねとらえているが、解析では局部座屈を考慮していないため、面外変形は発生していない。

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