プラスミドDNAに対する高LET放射線による非DSB性多重SSB誘発の可能性

DOI
  • 横谷 明徳
    日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター
  • 鹿園 直哉
    日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター
  • 藤井 健太郎
    日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター

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タイトル別名
  • Measurement of multiple SSB site in plasmid DNA by high-LET irradiation

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抄録

Heイオンビーム等を照射したプラスミドDNAを塩基除去修復酵素(Nth及びFpg)処理すると、グリコシレース活性により生じる付加的な1本鎖切断(SSB)として酸化的塩基損傷が観測され、この収率はLETの増大と共に顕著に減少する(2006年大会)。この理由として、DNA分子上に損傷が局在化(クラスター化)することによるDNA鎖の構造変化が酵素活性を阻害し、見かけ上の塩基損傷収率が減少したためであると考えられる。他方プラスミドDNAを用いた手法は、SSB及びDSB(2本鎖切断)をそれぞれ超螺旋構造から開環及び直鎖構造へのコンフォメーション変化として損傷を定量するため、二つ以上のSSBが生じてもこれがDSBを与える場合(SSB間の距離が6 bp以内)を除き、1SSBとして検出されてしまうため高LET放射線による損傷収率が過小評価されてしまう。これを克服するため、我々はDNA変性を利用した新しい非DSB性多重SSBの定量法を提案した(2007年大会)。今回この方法を高LET放射線照射したDNA試料に適用し、非DSB性の多重SSBが実際に生じているか否かを調べた。 試料には、高水和状態のプラスミドDNAフィルムを用いた。原子力機構TIARAで得られる4He2+イオンビーム(82 keV/m)を試料に照射した後、Hind III処理によりDNAを直鎖状にした。これにホルムアミド(50% v/v)を加え、37℃で5分間という穏やかな条件で変性処理し1本鎖DNA(SS-DNA)にした。残存する無傷のSS-DNAの線量依存性を、アガロースゲル電気泳動法により調べた。得られた結果は当初の予測に反し、多重SSBはほとんど生じないというものであった。この結果は、高LET放射線照射で生じるクラスター損傷は、複数のSSBよりもSSBと(複数の)塩基損傷で構成される可能性を示唆している。

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