ギャップジャンクション経由のバイスタンダー効果におけるバイスタンダー因子の移動時間の推定

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  • Estimation of time after X-ray microbeam irradiation for transfer of a bystander signal from an irradiated cell to an adjacent cell via gap junction

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抄録

[背景・目的]<BR> これまで我々は市販のラボ型マイクロビームX線分析顕微鏡を用いて、そのX線バイスタンダー効果実験への有効性とギャップジャンクション(GJ)を経由するバイスタンダー効果の存在を明らかにしてきた(2003、2006年本大会)。本研究では、照射細胞から隣の非照射細胞へGJを経由するバイスタンダー効果発現のためのシグナル(バイスタンダー因子)の照射後の移動時間を推定することを目的とした。そのために、昨年度GJ機能阻害剤として用いたLindane(γ-BHC)をできるだけ短時間で作用させ、また解除できる濃度及び処理時間を合わせて検討した。<BR> [材料・方法]<BR> 細胞は、ヒト新生児包皮由来正常繊維芽細胞NHDF(クラボウ)を用いた。LindaneによるGJ機能抑制はLucifer Yellow Transfer法を用いて判定した。バイスタンダー効果の検出は、照射後24時間インキュベーション後、p53発現領域をFITC標識蛍光抗体法によって観察した。バイスタンダー因子移動時間の推定には、照射後ある時点でLindane処理を行いすぐに除去し培養液に置換することによって、ある時間帯にのみGJ機能を抑制する手法を用いた。なお、X線分析顕微鏡(XGT-2700、堀場製作所)による照射条件は、ビーム直径100μm、管電圧30kVである。<BR> [結果・考察]<BR> NHDF細胞のGJ機能は、25μM Lindaneで30分間処理することによって完全に抑制され、Lindane除去後2時間で完全に回復することがわかった。ついで、この条件を用いて、マイクロビーム照射後、1, 2, 3, 4時間においてLindane処理を行い、24時間後バイスタンダー効果の有無を判定した。その結果、1, 2, 4時間ではバイスタンダー効果が観察されたのに対し、3時間の場合のみバイスタンダー効果が抑制された。これらの結果より、p53発現に関わるバイスタンダー因子の照射細胞から隣の非照射細胞への移動は、照射後およそ4時間前後で起こっていると推測される。

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