集束式マイクロビーム装置による細胞照準照射の試み
書誌事項
- タイトル別名
-
- Progress in Target Irradiation of Individual Cells using Focusing Heavy-ion Microbeam
この論文をさがす
抄録
重イオンビームは、イオンが通過した近傍に非常に密なイオン化を引き起こす。そのため、重イオンは、ガンマ線など低LET放射線とは異なる生物効果を示す。しかし、重イオンビームの生物効果のメカニズムにはまだ不明な点も多い。従来のブロードビーム照射法で低線量の重イオンを細胞に照射すると、イオントラック分布がポアソン分布に従いランダムにヒットするため、細胞ごとのイオントラックのヒット数に明確な差が生じるようになる。そのため、重イオン一つが細胞に及ぼす影響を明らかにするためには、細胞一つ一つを正確に狙い、あらかじめ設定した個数のイオンを照射することができる、細胞照射用重イオンマイクロビーム装置が必要になる。そこで、私たちの研究グループでは、これまでコリメーション式重イオンマイクロビーム装置を用いた細胞照射応答の研究を進めてきた。しかし、コリメーション式重イオンマイクロビーム装置では、金属板に一つだけ空けたピンホールでビームを微小化する際に生じる、ピンホールエッジでの散乱を避けることができないため、照準できるビームサイズに限界があった。そこで、原子力機構TIARAのAVFサイクロトロンの垂直ビームラインに新たなマイクロビーム装置を設置した。このマイクロビーム装置は、四重極磁気レンズで重イオンを真空中で最小径1 μmまで微小(マイクロビーム)化し、大気取り出しをすることができる。このビームを用いて、細胞への照準照射を実現するために、ビームライン直下に細胞照準用倒立顕微鏡と、細胞試料用電動ステージを設置した。照射にあたり、集束ビームの位置は、試料ステージに設置したプラスチックシンチレータで検出した。細胞は、イオン飛跡検出プラスチックCR39のフィルム上に培養し、8 μm厚のカプトン膜でカバーし乾燥を防止した。照射したイオン数は、倒立顕微鏡レボルバに取り付けた、半導体検出器を用いてカウントし、高速シャッターと連動させることで、照射イオン数を制御した。このシステムを用いたHeLa細胞への照準照射実験の現状について報告する。
収録刊行物
-
- 日本放射線影響学会大会講演要旨集
-
日本放射線影響学会大会講演要旨集 2009 (0), 137-137, 2009
一般社団法人 日本放射線影響学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680618201984
-
- NII論文ID
- 130007000972
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可