DNA放射線分解研究の歴史的展望

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  • Review of DNA Radiolysis

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抄録

DNAの放射線分解に関する最初の報告は、1962年B.EkertによってNatureに発表された。それはチミン塩基の酸化、すなわち5,6位のハイドロキシレーションである。その後塩基損傷や鎖切断の研究が急速に進展していった。1970年代に入って水の放射線分解の研究が進み、主として·OH (G=2.70)とeaq- (G=2.70) が生成することが解り、DNA損傷機構解明の糸口となる。これらの両活性種とDNA構成成分との反応速度定数は1010と同程度であり、DNA損傷の殆んどは水の放射線分解で主に生成するこれらの活性種による酸化ないし還元によると考えられるが、DNA塩基の修飾ないし分解収率に関しては·OHの寄与がeaq-の寄与よりもはるかに高い。ピリミジン塩基の5,6位とプリン塩基の8位のハイドロキシレーションが主な反応として生じ、更なる酸化は開環に繋がる。またアミノ基が酸化されて水酸基に変化する。ピリミジン塩基の変化率はプリン塩基の変化率の約4倍である。<br>·OHの10-20%がデオキシリボース部位と反応(反応速度定数は約109)し、鎖切断が誘発される。切断機構として·OHによる4'位置の Hの引き抜きとイオン分離による場合、また4'位置のラジカル生成により3'位置と5'位置でエステル結合が加水分解される場合と、5'位置が直接ラジカルになる場合が考えられている。実際鎖切断の30%はアルカリ処理によって生じるといわれている(Elgsaeter et al., 1976)。他にタンパク質とのクロスリンクの報告もある。タンパク質に容易に生成する含硫黄アミノ酸ラジカルや芳香環ラジカルによるDNA塩基環への結合である。

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