DNA二本鎖切断はLET増加に伴い増加するのか?減少するのか?: (2)減少するという立場からの考察

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  • Does DSB increase or decrease with increasing LET? (2) A statement from the Decrease.

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抄録

放射線生物学の歴史において、電離放射線の生物効果の表出は遺伝物質であるDNAの損傷に起因するとされ、それは放射線特異的損傷としてとらえられてきたDNA二本鎖切断(DSB)の観察結果からも妥当なものと考えられてきた。粒子線生物学の興隆により、異なる線質による生物効果の差異、特にLETと生物効果の関係が注目されるようになったが、その結果は研究グループによりまちまちであり、LET依存的なDSB生成収率の傾向は収れんを見せなかった。そこで私たちは異なる標的と検出方法を用いた複数の実験系を同時平行で行い、その結果を比較検討することにより、DSB生成収率のLET依存性という古くて新しい命題にチャレンジすることにした。<br>その検討は、精製DNA分子を標的にした試験管内実験と培養細胞の染色体DSBを解析する細胞内実験で行った。試験管内実験では、環状プラスミドDNAであるpDEL19(4,814 bp)と線状ファージDNAであるlambda phage DNA(48,502 bp)を照射後、それぞれ中性アガロースゲル電気泳動による環状分子のコンフォメーション変化とパルスフィールド電気泳動による分裂片集団の数平均分子量算出により、生成DSB数の解析を行った。照射培養細胞の染色体DSBは中性アガロースゲル電気泳動を用いたFARアッセイにより解析した。その結果、用いたいずれの実験系においても、γ線(0.2 keV/µm)、Cイオン(13 keV/µm)、Feイオン(200 keV/µm)によるDSB生成収率はLETに対して反比例することが分かった。この結果は、少なくとも生理的条件下におけるDSB生成収率がLET依存的に減少することを支持するものである。本口演では、私たちと同様なLET依存性を見せる過去の知見を交えながらDSBの生成収率と生物効果に対する考察を行っていく。

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