トロン温泉の生活習慣病に及ぼす健康効果の基礎的検討

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  • Basic study on health effects of thoron spa on life-style-diseases of humans

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【目的】これまで我々は、ラドン吸入は抗酸化機能などの生体防御機能を亢進させ、活性酸素由来の生活習慣病の抑制に有効である可能性を示唆してきた。同様に、トロン温泉は、一般の温泉にある温熱や化学的効果などに加え放射能としての効果もある。しかし、そのメカニズムは未だ明確ではなく、更なる解明が期待されている。本研究では、抗酸化物質や疾患関連物質などを指標に、トロンおよび温熱が生活習慣病に及ぼす健康効果に関して検討した。【対象および方法】岩手県・花巻トロン温泉の浴室の湿度は90%、室温は39°C、湯温は40°Cであり、湯面近辺のトロン濃度は約4900Bq/m3との報告例がある。健常、糖尿病、疼痛性疾患を対象に、地元の各被験者は、1日計30分、週5回、2週間入浴した。全被験者に対し、試験開始前(対照)、開始1、2週間後の入浴後および3週間後にそれぞれ血圧測定および採血をし、試料に供した。試料の分析は定法に従った。なお、試験に際し、全被験者にインフォームド・コンセントを行うなどした。【結果例および考察】1)各対象群における抗酸化機能について、SOD活性が疼痛性疾患群において有意に増加した。2)糖尿病群において、糖質および腎機能関連物質に有意な変化はなかった。しかし、FFA、IRIおよびケトン体は変化に有意差はないものの、改善傾向が見られた。これより、糖尿病性ケトアシドーシスを抑制する可能性が示唆できた。3)疼痛性疾患群において、α-hANP値は増加し、血圧の降圧傾向が見られた。また、Con Aは有意に増加し、さらに、CD4陽性細胞の有意な増加とCD8陽性細胞の有意な減少が見られた。これより、組織循環の促進や免疫機能の亢進を認め、疼痛の症状緩和が示唆できた。以上の結果などにより、トロンおよび温熱による糖尿病や疼痛性疾患などの生活習慣病の症状緩和に関するメカニズムの一端を明らかにすることができた。

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