毒性学から臨床副作用学へのアプローチ ‐薬物性肝障害 ;原因究明へのチャレンジ

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Approach to clinical toxicology from toxicology - Drug liver injury: Challenge for cause unfolding

抄録

2000年3月、糖尿病の新しい治療薬として販売されていたノスカール(トログリタゾン:TOR)が劇症肝炎起因物質ということで市場から撤退した。同年2月、高尿酸血症治療薬ユリノーム(ベンズブロマロン;BNZ)も同じ劇症肝炎で緊急安全情報を出すことになった。年間35万人が使用し、20年以上販売されてきて累積8例の劇症肝炎死亡例が出たということがその理由であった。BNZは本当に劇症肝炎起因物質なのだろうか?その原因追及にとり組んだ歩みを報告する。実験1:BNZの薬効の一つにPPARアゴニスト作用があることから、Reporter gene assayによるsub typeを検討。TORはPPARγ、BNZはPPARαであった。実験2:ラットとヒトの初代培養肝細胞によるアポトーシス試験でTORは両種とも陽性、BNZはヒト細胞では陰性であった。実験3:BNZはBrを有しており、それが外れて劇症肝炎起炎物質Benzaroneに代謝されると言われていた。しかしBrは外れず6位の水酸化体に代謝されることをin vitro, in vivo試験で証明した。実験4:健康人を用いた臨床試験でBNZ原体は尿中には出現せず、代りに6-OH体が発現した。血中濃度も急峻に消失する原体とは異なり6-OH体は緩徐に減衰した。実験5:ヒトの薬物代謝酵素試験でBNZはCYP2C9のみの単酵素代謝を受けることが判明。そこで、5人のBNZ肝障害患者でDNAチップによるPoor metabolizerを探索したが、いずれもWild Typeであった。実験6:2002年遠藤らは、尿細管上皮細胞に尿酸トランスポータ(URAT1)があることを発見。その阻害剤としてBNZは他物質と較べダントツの活性を持ち、さらに6-OH体も強力な阻害剤であった。6-OH体は活性代謝物でありBNZはプロドラッグであることが発売から20年以上経た今日に明らかとなった。しかしBNZが劇症肝炎起炎物質であるという証拠は未だに見つかっていない。今後は特異体質患者を見つける努力をしていく必要があろう。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680634916864
  • NII論文ID
    130007003298
  • DOI
    10.14869/toxp.36.0.1104.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ