細胞増殖抑制因子mannose 6-phosphate/insulin-like growth factor-II receptor (M6P/IGF2R) :前立腺におけるアンドロゲンによる発現調節と新規(抗)アンドロゲン作用検出マーカーとしての応用

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タイトル別名
  • Growth suppressor mannose 6-phosphate/insulin-like growth factor-II receptor (M6P/IGF2R): down-regulation by androgen in rat prostate and application of novel biomarker for screening of chemicals with androgen-receptor mediated activities.

抄録

M6P/IGF2RはTGFβの活性化およびIGF2の分解に関与することから、細胞増殖抑制因子として機能する。雄ラットを去勢すると、前立腺はアポトーシスが進み萎縮する。この時、TGFβが増加することが知られている。今回、アンドロゲンによる前立腺細胞の増殖制御におけるM6P/IGF2Rの関与を知るため、前立腺におけるM6P/IGF2R mRNA発現への去勢による影響を調べた。更に、(抗)アンドロゲン剤のスクリーニング法のひとつであるHershberger試験において、M6P/IGF2R mRNA解析の有用性を検討した。[方法](実験1)雄のCrj:CD(SD)IGSラットの前立腺および肝臓において、去勢前および去勢10日後までの器官重量およびM6P/IGF2R mRNA 発現量を測定した。また、去勢後4日間testosterone propionate(TP, 1mg/kg/day, sc)を投与し、非投与時と比較した。(実験2)OECD案のHershberger試験を実施した。抗アンドロゲン剤(flutamide、p,p'-DDE)、抗アンドロゲン作用を有さない有糸分裂阻害剤(benomyl、colchicine)を10日間強制経口投与し、前立腺の重量とM6P/IGF2R mRNA の発現量を調べた。尚、いずれの実験においてもM6P/IGF2R mRNA の発現量はReal-time PCR法にて測定した。[結果] (実験1)前立腺において、M6P/IGF2R mRNA発現量は、重量の低下に先行して去勢翌日から8-10倍に増加した。これらの変化はTP投与により拮抗された。一方、肝臓ではいずれも去勢による影響はなかった。(実験2)flutamide、p,p'-DDE 投与により、前立腺の重量は低下し、M6P/IGF2R mRNA 発現量は増加した。一方、benomyl、colchicineの投与では、前立腺重量は低下したものの、M6P/IGF2R mRNA 発現量は変化しなかった。[考察] 以上の結果から、前立腺において、M6P/IGF2R mRNA発現は、アンドロゲンにより負の制御を受けており、去勢後の前立腺萎縮に関与している可能性が示唆された。また、Hershberger試験において、器官重量のみの評価では、いわゆるアンドロゲン受容体を介する内分泌攪乱化学物質と区別できない有糸分裂阻害剤も、必要に応じM6P/IGF2R mRNA発現量を精査することにより識別が可能となり、内分泌攪乱化学物質のスクリーニングがより正確に行えるものと考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680635640960
  • NII論文ID
    130007003837
  • DOI
    10.14869/toxp.32.0.63.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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