NOによるニトロ化ストレスとシグナル伝達機構

DOI
  • 赤池 孝章
    熊本大学大学院医学薬学研究部 感染・免疫学講座 微生物学分野
  • 澤 智裕
    熊本大学大学院医学薬学研究部 感染・免疫学講座 微生物学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Nitrative stress and signal transduction induced by NO

説明

一酸化窒素(NO)は、血管・神経系の主要な情報伝達物質であるが、感染炎症において過剰に産生された場合、生体に毒性を発揮して様々なストレス応答を引き起こす。我々は、NOにより誘導されるユニークなストレス応答として、核酸塩基グアニンのニトロ化反応を介する細胞の生存シグナル伝達機構について解析を進めてきた。その結果、感染・炎症に伴って生成するNOがニトロ化ストレスにより、heme oxygenase-1(HO-1)を誘導して、様々なストレスに対して細胞保護作用を発揮していることが分かってきた。<BR> 例えば、マウスの細菌(サルモネラ)感染モデルにおいて、NO産生に依存してHO-1の発現が誘導され、細胞保護・感染防御効果をもたらしていることが明らかとなった。また、NOによるHO-1の誘導と細胞保護作用は、培養マクロファージの感染系においても確認された。一方、NOを産生している細胞内で著明なグアニンニトロ化がもたらされ、各種8-ニトログアニン誘導体とともに、全く新規のcGMP誘導体である8-ニトロcGMPが産生されることを、免疫化学ならびに電気化学検出器を用いたHPLC分析により証明した。さらに興味あることに、8-ニトロcGMPが、強力にHO-1の誘導をもたらし、抗アポトーシス・細胞死抑制活性を発揮することにより、NOの二次的なシグナル分子として機能することが示された。<BR> これらの知見より、NOが、8-ニトロcGMP生成を介して、ニトロ化シグナル経路の活性化をもたらし、さらに、このユニークなNOシグナル系の活性化によりHO-1が発現・誘導され、NOの強力な感染防御効果がもたらされるものと考えられた。今後、感染防御のみならず、その他の多彩なNO機能の発現におけるNO−ニトロ化シグナル機構の解明が期待される。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680636212352
  • NII論文ID
    130007004233
  • DOI
    10.14869/toxp.33.0.18.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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